抄録
本研究の目的は,第4学年の「□,△などを用いた式」において,児童が事象をどのように捉えているのかを明らかにして,数量の関係を表す式とみる力を育成する学習指導の示唆を得ることにある。調査問題から児童の事象の捉えには,「関連性のない異なる事象と捉えている状態」と「数量の関係を表す式とは異なる方法であるが,変化する一つの事象と捉えている状態」の二つの状態があり,そうした児童の実態が,「数量の関係を表す式とみる」という反省的ディスコースの行為が対象化されない要因となっている。反省的ディスコースを生成するためには,「具体的な数字を擬変数とみている数字式」や
「変化する一つの事象」という対象となる行為をつくり出すことで,数量の関係を表す式とみる力を育成する学習指導が期待できるという示唆が得られた。