芝草研究
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芝草を加害するコガネムシ類に関する研究 XV
オオサカスジコガネの生活史・生態および経過習性
高橋 和弘吉田 正義
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1982 年 11 巻 1 号 p. 77-85

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抄録
芝草の重要害虫であるオオサカスジコガネの防除に関する知見を得る目的でその生活史, 生態および経過習性について調査した。
(1) 成虫が地上へ出現する期間は6月上旬~8月中旬で, その最盛期は6月中旬であった。成虫は夜行性で, 日没とともに地上に出現し群飛した後交尾した。群飛は19時~21時の間に行われ, 飛翔個体の大部分は雄であった。
(2) 成虫の地上への出現は, 雌雄とも羽化後1週間前後の潜伏期を経た後, 雄では3~10日間ほぼ連続して毎日出現し, 雌では1回のみ出現する個体が多かった。
(3) 成虫の寿命および産卵に対して芝草の摂食の有無は影響をおよぼさないものと推察される。成虫の寿命は雄では16.3日, 雌では17.1日, 産卵数は45.2個であった。
(4) 成虫の産卵は6月下旬から行われた。卵期間は室温で16.0日, ふ化率は97.7%でせい一であった。
(5) 卵は長径が1.76mm, 短径が1.29mmのだ円体で, 吸水成長を行い, ふ化値前には原重量の3.48倍に達した。
(6) ふ化直後の幼虫は7月上旬から出現し, 芝草の根を食害して成長する。2齢虫は7月中旬から, 3齢虫は8月中旬からみられ, 幼虫態で越冬する。
(7) 幼虫の頭幅の頻度分布は明らかに3つの山が認められ, 幼虫は3齢を経るものと思われる。1齢および2齢の期間はともに20~25日前後であった。
(8) この幼虫の密度の高い場所は土壌含水量の高い地帯であった。
(9) 蛹は5月下旬からみられ, 蛹期間は25℃で12.1日, 羽化率は95%であった。
(10) 芝草地で, この虫による被害が目立つのは, 8月中旬以降で, この虫を捕食するためカラスが芝草を掘り返す二次的被害がみられた。
(11) この虫の防除方針としては, チビサクラコガネと同様に, 成虫が地上に出現する6月中・下旬に残効性の長い農薬を散布することが望ましい。
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