日本芝に発生したネクロティックリングスポット病

抄録

コウライシバ (Zoysia matrella) , ノシバ (Z.japonica) および日本芝の改良品種 (Z.japonica×Z.matrella) に発生する生育不良症状, いわゆる「しずみ症」の中に, 国内では未報告の病害が確認された。本病は芝地上で直径約10～40cm, 円形パッチあるいはリング状を呈したが, 不整形のものもあった。罹病した根や匍匐茎は黒く変色する特徴があり, 茶褐色で有隔の外生菌糸や菌糸塊が多く観察された。根や匍匐茎から高頻度に分離された菌のショ糖加用ジャガイモ煎汁寒天 (PSA) 培地上での最適生育温度は20～25℃の間であった。病原性試験の結果, 本菌は日本芝, バミューダグラス類 (Cynodon dactylon×C.transvaalensis) および4種の寒地型芝草に病原性を示した。また, コウライシバに対する病原力は, 日本芝立枯病菌 (Phialophora sp.) よりも強かった。偽子のう殻子のうおよび子のう胞子の形態的特徴などから, 本菌をOphiosphaerella korrae (J.Walker & A.M.Sm.) Shoemaker & Babcockと同定した。また, 本菌による国内で未報告の日本芝の病害をネクロティックリングスポット病 (英名: necrotic ring spot) とすることを提唱した。