2001 年 21 巻 11 号 p. 138-143
既往研究において成人前期の男性の結婚観及び仕事観の構成要素は明らかになったが,構成要素ごとの成人前期の男性の心の揺れまでは判明できなかった.そこで本研究では, 結婚観及び仕事観の構成要素ごとの成人前期の男性の心の揺れを解明するため,ウェーブレット多重解像度解析を行った.その結果,成人前期の男性は,伝統的価値観の差異にかかわらず,結婚観においても仕事観においても保守的な考え方と革新的な考え方の間で心の揺れがあることが明らかになった.さらに,仕事観においては,伝統的な考え方と非伝統的な考え方が混合した者と伝統的な考え方の者は,心の揺れ方が類似していることが判明した.ウェーブレット多重解像度解析を用いることにより,既往研究では明らかにならなかった成人前期男性の結婚観及び仕事観の構成要素ごとの心の揺れを検証することができ,ウェーブレット多重解像度解析の心理学への適用の可能性が示された.