2007 年 27 巻 11 号 p. 97-104
乱流拡散火炎の微視的な内部構造をより基礎的に解明するためにはその素過程と考えられる渦を伴う拡散火炎の動的な挙動を制御し,その瞬時・時系列的解析を行うことが重要であると考える.本論文では水素30%+窒素70%を燃料とし,中心流を音響励起させることにより,制御可能な渦を伴う軸対称2次元の拡散火炎を形成できる燃焼器を構築した.これを用いて,レーリ散乱法とレーザ誘起蛍光法を組み合わせた瞬時2次元温度・OH-LIF同時測定を行い、火炎内における大規模渦と火炎の干渉挙動を観測した.また,中心の燃料流と周囲の空気流の間に形成される正拡散火炎と,中心の空気流と周囲の燃料流の間に形成される逆拡散火炎の構造の違いに着目し,正拡散火炎では中心燃料流の増加によっても火炎温度はほとんど変化しないのに対して,逆拡散火炎では中心空気流の増加に伴い,火炎温度が著しく低下し,消炎に至ることを明らかにした.さらに,逆拡散火炎で強い中心速度変動を受けた渦と火炎の干渉挙動では,渦の後流側で消炎が生じ,一組のエッジフレームが形成され,内側のエッジフレームは燃料不足のために消炎に至るが,外側のエッジフレームは再着火をおこす場合が存在することを明らかにした.