ラビング処理を行った配向膜表面における液晶分子の配向機構は、まだ完全には解明されていない。そこで、筆者らは、この配向機構を解明する目的で、ラビング基板の表面形状と形状転写基板の表面形状を原子間力顕微鏡を用いて観測を行った。そして、この形状によって生じる液晶分子の配向歪から方位角方向の表面配向エネルギーを弾性体理論によって計算し、その値と実際に実験から求めた値を比較した。この結果、形状転写基板の場合は計算値と実験値がほぼ等しくなることに対して、ラビング基板の場合は実験値より計算値が2桁以上小さくなることが明らかになった。このことから、ラビング基板における液晶分子の配向は、表面形状効果よりももっと支配的な要素が存在することがわかった。