2018 年 50 巻 1 号 p. 33-40
本研究の目的は,粘土造形と描画の発達について共通性や差異性,順序性や構造などを明らかにすることである。今回の調査ではモチーフを「人物」とし,幼児から中学生を対象に,モデルを用いた場合と用いない場合の比較実験を行い,モチーフを見ることが描画及び粘土造形にどのような影響を与えるのかを,グッドイナフ人物知能検査の要素項目を用いた作品分析によって考察した。まずモデルの観察で得られた情報は描画にはある程度は反映されるが,粘土造形では表現に結び付き難いことが分かった。次にモデルの有無にかかわらず,粘土造形では立体を平面的な輪郭意識と基底面で捉える「クレープ表現」等が,特に小2・4に多数見られたほか,描画においては学年が上がるに従って簡略化やキャラクター的表現が増加した。また,自然な造形発達において,平面的な表現から奥行きや面・量などを意識した表現に至るのは困難であることが示唆された。