美術教育学研究
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  • 青木 善治, 松本 健義
    2018 年 50 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    子どもが生きる力を育む学びの過程をつくる教師として,子どもの学びを常にとらえ直し実践する専門的で高度な眼差しの形成を可能とする教育研修のあり方を,子どもの造形活動の関係と過程へ,相互作用的に関わる教師の実践を通して明らかにした。初任,中堅,熟達の経験年数の異なる教師グループで特定の子どもに着目し,材料や作品等のものや,友達や教師等の人と相互作用的にかかわりながら,作品や場所の意味をつくり,つくり変えていく過程を,ビデオ記録する参与観察を実施した。撮影したビデオを用いたカンファレンスによる事後協議会を実施し,子どもの行為の関係と過程から,学びの過程の見方やとらえ方を,ビデオを媒介にした参観教師の個々の語りを媒介にして共有し,「学習」「子ども」「教師」等について自明化していた自身の見方,感じ方,考え方,ふるまい方を,その場で省察し変容していく過程を示した。

  • 赤木 恭子
    2018 年 50 巻 1 号 p. 9-16
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究は,地域社会や学校現場との協働によって見出される‘経験的な学修’を,美術科教育における対話的な様相を考察することから検討するものである。本論で示す概念としての対話は,外的な場で他者と関わる領域に対して生成的なプロセスへ向かう相互作用に基づく自己形成への文脈を意味する。美術教育において,イメージとメディア(媒体)の間に社会的現実を再認識させるような経験の諸相には,造形したものから実感として身体化していけるような,媒体空間や創造的な学びの場が求められる。本論では,『小大(院)連携プログラムI「一新の夢獅子」』を事例として,このような学びが見出される文脈に対する感覚やイメージのあり様を考察する。そして,人間形成や美的な行為を涵養する美術科教育の目的において,媒体/場のあり方を検討し,対話的なメディアの表象における学修の可能性を追究する。

  • 秋山 敏行
    2018 年 50 巻 1 号 p. 17-24
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究では,新学習指導要領の改訂において重視されている「何ができるようになるか」という命題をふまえ,教科目標等の文言中に再度記載されるようになった「できる」の含意を鑑み,子どもたちが展開する造形的な活動において「できる」ようになるということを「可能性」の実現の過程としてとらえ,その論理的なありようについて,意味生成に係る四元モデルによる「読み」の実践等を通して考察を試みた。このモデルは,実現された「可能性」を示すものであると同時に,実現されなかった・次に実現されるかもしれない数多くの「可能性」を示すものでもある。あるひとつの「できた」ことの背後には,次に「できる」かもしれない「可能性」があるのである。その「可能性」を大切にすることこそ,図画工作科の授業における教師のかかわりの要諦ではないかと考えているのである。

  • 秋山 道広, 初田 隆
    2018 年 50 巻 1 号 p. 25-32
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究では,図画工作科における,子ども・教師・保護者間での児童絵画に対する見方(評価)の共通性や差異性に着目し,調査を基に比較検討することによって,今日の絵画教育の問題点や課題の鮮明化を試みた。結果,教師と保護者の見方(評価)には強い相関性が確認された。1年生では子どもと保護者・教師との相関性は低く,3年生から6年生になるに従い一定の相関性が認められるようになっていく。教師と保護者が写実を基礎とした絵画の価値方向を子どもに示すことで,次第に子どもの価値意識が教師・保護者の共有する児童画イメージに接近してゆくという関係性が認められた。また,得手不得手の判断基準を,写実的・再現的な絵画の評価観に置く教師の中には,絵画指導に対して苦手意識を持つものも多く,それらを補完するために定型的な指導がなされている可能性が示唆された。

  • 淺海 真弓, 初田 隆, 磯村 知賢
    2018 年 50 巻 1 号 p. 33-40
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,粘土造形と描画の発達について共通性や差異性,順序性や構造などを明らかにすることである。今回の調査ではモチーフを「人物」とし,幼児から中学生を対象に,モデルを用いた場合と用いない場合の比較実験を行い,モチーフを見ることが描画及び粘土造形にどのような影響を与えるのかを,グッドイナフ人物知能検査の要素項目を用いた作品分析によって考察した。まずモデルの観察で得られた情報は描画にはある程度は反映されるが,粘土造形では表現に結び付き難いことが分かった。次にモデルの有無にかかわらず,粘土造形では立体を平面的な輪郭意識と基底面で捉える「クレープ表現」等が,特に小2・4に多数見られたほか,描画においては学年が上がるに従って簡略化やキャラクター的表現が増加した。また,自然な造形発達において,平面的な表現から奥行きや面・量などを意識した表現に至るのは困難であることが示唆された。

  • 有原 穂波, 池内 慈朗, 小澤 基弘, 八桁 健
    2018 年 50 巻 1 号 p. 41-48
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,児童の能力特性と絵画表現の関わりや教科学習との関連を詳らかとすることである。その手立てとして,次の3つの調査を行った。調査Iでは,MI理論を用いて認知的な側面から能力特性を測る質問紙調査を児童に対して実施し,知能検査の結果と比較を行った。調査II・IIIでは,美術教育の専門家に当該児童が描いた絵の評定を依頼し,それを踏まえて更に考察を進めた。その結果,MI理論における「身体運動的知能」は表現の行為性,「対人的知能」は絵画の感覚的な表現と関係があることが示唆された。これらはいずれもコミュニケーションと関連することから,絵画表現は学習環境を形成する重要な一要素であるコミュニケーション能力との関わりが深いことが確認された。また,知能検査における「直感判断力」は多くの知能と関わりがみられ,図工・美術の授業は8つの知能を十分に活性化できる教科であることが示唆された。

  • 五十嵐 史帆
    2018 年 50 巻 1 号 p. 49-56
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究は,地域文化の核でもある大学と美術館が互いの特性を生かし有効な連携を継続していくことを目的とした「大学・美術館連携モデルの構築」を視野に入れた基礎的研究である。本稿では,3つの大学において教員免許の取得を目指す大学生を対象にアンケート調査を行い,結果の分析・考察を行った。考察から,美術館が大学生の生活と乖離している現状と,美術館やそこでの鑑賞活動に対して学生が画一的なイメージを抱いているという問題がみえてきた。この問題に対し,美術館が,対社会的な存在である「地域美物館」として利用者との関係を見直していくことは重要であるが,それとともに,大学も美術館と連携し,大学生を取り込んだ美術館活動を提案し実践していくこと,大学生に対して美術館鑑賞のイメージの転換をはかっていくことが必要であると確認した。今後の課題として,具体的な実践を重ねて検証していく。

  • 市川 寛也
    2018 年 50 巻 1 号 p. 57-64
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    近年の「妖怪ウォッチ」ブームに象徴されるように,今や妖怪は視覚文化として広く認知されている。一方で,民間伝承として語られてきた妖怪の多くは視覚で捉えることのできない無形の文化である。本稿では,民俗文化と大衆文化の間で揺れ動きながら形成されてきた現代の妖怪イメージを研究対象とする。その際,過去に蓄積されてきた知識や情報を参照しながら各種の表現媒体に変換されていく過程に着目し,そこに妖怪文化の持つ本質的な創造性を見出した。「妖怪をつくる」というテーマには,既存のキャラクターをモチーフとして用いるだけではなく,妖怪がつくられる仕組みを創作活動に組み込むというアプローチを想定することもできる。その実践事例として,筆者が取り組んできた「妖怪採集」というワークショップを踏まえ,現代の妖怪文化を通じた地域学習の可能性について一つの方法論を提示した。

  • 井ノ口 和子
    2018 年 50 巻 1 号 p. 65-72
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,教員養成課程における初等教科教育法(図画工作)における取組の分析を通し,学生の図工観・指導観の現状と課題を明らかにしたうえで,学生の「『子どもの造形』観」を考察することである。その結果,第一に,多くの学生が作品中心の図工観,作品を作らせるための指導というイメージをもっている課題を明らかにした。第二に,学生の「『子どもの造形』観」は,作品発想から完成のゴールに向け一直線に進行するものであると捉えていることを明らかにした。学生は,この「『子どもの造形』観」に基づき,造形活動を細分化し,スモールステップの指導が有効であるとする指導観を形成している。本来,子どもの造形は「つくり・つくりかえ」ながら展開するものである。図工観を形成するものとしての「『子どもの造形』観」の考察が今後の課題である。

  • 内田 裕子, 大岩 幸太郎
    2018 年 50 巻 1 号 p. 73-80
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本論は,教員養成課程の学生が「形」の指導力を身に付ける「形の学習プログラム」開発の一環として,形の学習内容及び方法を検討するために行った調査内容とその分析結果を論じたものである。特に「奥行き」に関わる知識や技能について調査し,形の学習プログラム開発に資する「奥行き」の事項を検討した。「奥行き」は形の造形事項や構成原理の中でも取分け写実的に描けないことと関係が深いため,図画工作科や美術科が苦手になる大きな理由とされる。しかし,現行及び次期学習指導要領解説では具体的な言及は無いため,本論では多様な着眼点を持つ「奥行き」の研究内容を整理すると共に,その結果を手掛かりに「奥行き」の認識を主軸とするアンケートを作成し,教員養成課程の学部生及び大学院生に実施した。このアンケート結果の分析及び考察に基づき,形の学習プログラムの開発において検討を要する奥行きに関する事項を整理した。

  • 江藤 望, 大村 雅章
    2018 年 50 巻 1 号 p. 81-88
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    イタリア,ゴシック後期のフレスコ画には,金属箔を駆使した技法が贅沢に使われている。これまでの研究で,この技法をチェンニーニの技法書『絵画術の書』および現地調査に基づいて実証的に解明してきた。しかし,金属箔をフレスコ画の壁面に貼り付けるための接着剤である油性モルデンテの解明が俟たれていた。その理由として,モルデンテに必要なワニス液の処方が解明されていないことが挙げられる。本稿では,その処方は依然として不明であるが,次の方法で油性モルデンテにアプローチした。まず,『絵画術の書』に倣ってモルデンテの前準備となるボイルド・リンシードオイルの追試実験を行った。次に,ボイルド・リンシードオイルと混ぜるワニス液の主成分である樹脂の持つ役割を論じた。最後に,想定される樹脂による油性モルデンテを作製し,実際に技法に取り組み油性モルデンテにおける樹脂の役割を検証した。

  • 額尓敦 , 初田 隆
    2018 年 50 巻 1 号 p. 89-96
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,「感覚横断的な活動を通して感性的側面より環境意識を高めるための造形プログラム」を開発し,内モンゴル自治区の小学校での実践可能性を探ることである。内モンゴルの大学と小学校で試行実践を行い,受講者の活動状況やプレ・ポストテストの記述内容から,プログラムの効果を分析・考察した。プログラムを受講した小学生は,感覚横断的な活動を通して,表現の喜びを味わうとともに自らの感性や感覚,想像力が開かれていくことを実感することができた。また環境意識の変容もみられ,内モンゴルにおける今後の展開可能性を確認することができた。

  • 大泉 義一
    2018 年 50 巻 1 号 p. 97-104
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本稿は,学習指導要領改訂をめぐる学校教育の状況を問題の所在としてふまえ,新学習指導要領の理念として掲げられている「社会に開かれた教育課程」を図画工作・美術科教育において実践化するための視点を考察するものである。まず,「教育課程論的視点」における検討を契機として,その編成を「子供論的視点」から構想することが重要であることを指摘している。そしてその構想においては「教育内容論的視点」,「学習過程論的視点」から,具体的な授業実践をつくりあげていく見通しの重要性を示し,今後の実践化のための示唆を提起している。以上の考察から,「社会に開かれた教育課程」の実践化においては,「カリキュラム論からの批判的吟味」が一層不可欠であり,そうした吟味を教育現場と市区町村の教育行政とが協働して行っていけるような仕組みづくりを構築する必要があることを見出している。

  • 大平 修也, 松本 健義
    2018 年 50 巻 1 号 p. 105-112
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究は造形活動における子どもと他者との相互作用的な関わりが子どもと世界の共感的関係を創造し,子ども同士の思考や行為の組み合わせとして協働的な造形行為に表れるあり様を示すことを目的とした。採取した生き物や友達と一緒に遊ぶためのものを創造する「総合的な学習の時間」と連環した「図画工作科」の実践において,2人の子どもが生き物を飼育する箱を再構成するため,校内の畑の乾いた硬い土を軟らかくて「さらさらな土」につくり変えていく相互作用的な造形行為の過程を相互行為分析した。また場面画像と作文シートにより記述分析した。この分析結果から子どもの相互作用的な造形行為を通して現象する世界との共感的関係の生成を「ブリコラージュ」,「環世界」の知見から考察した。相互作用的な造形行為においては子どもが協働的に「環世界」の結節点を創造することを通して世界との共感的関係が生成されることを示した。

  • 大村 雅章, 江藤 望
    2018 年 50 巻 1 号 p. 113-120
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究は,イタリア・ルネサンス期に活躍した,カルロ・クリヴェッリのテンペラ画に多用された石膏地盛り上げ技法について,実証実験を通して明らかにするものである。これまで,フラ・アンジェリコが描いたフィレンツェのサン・マルコ修道院のフレスコ壁画,『受胎告知』と『磔と聖人たち』の円光について,チェンニーノ・チェンニーニの技法書「絵画術の書」に則って実証実験を行ったところ,板絵テンペラ画の円光技法を転用したことが解明できた。次に,調査をルネサンス期前後におけるテンペラ画の工芸的装飾技法に拡大したところ,カルロ・クリヴェッリの傑作である『マグラダのマリア』(アムステルダム国立美術館所蔵)の石膏地盛り上げ技法に特異性が見られた。あえてルネサンス盛期に伝統的な板絵テンペラ画にこだわり,採用された彼の石膏地盛り上げ技法の再現と検証を行う。

  • 岡田 匡史
    2018 年 50 巻 1 号 p. 121-128
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本稿は連稿前篇である。絵を見て読む,その複合的学習過程で感性・読解力・言語活用能力・美的批評眼等を総合的に養うことを狙う「読解的鑑賞」と,日本の中学生の西洋絵画(異文化体験的対象)との邂逅を契機に促そうと努める,「美術を通した西洋理解」の2つを,本稿の基柱と考える。バロック期からレンブラント「夜警(1642年)」を選定し,その鑑賞題材化の諸可能性を検討した。作品調査で収集した情報を土台に,さらには神林恒道の「夜警」鑑賞手引き,堀典子が社会的・歴史的観点から「夜警」解読に迫る鑑賞授業実践報告も参照し,鑑賞題材構想を具体化した。結果的にE. B.フェルドマンの4段階批評法を基盤に7段階・15項目で成る鑑賞学習プログラムを組織でき,本稿ではその第1段階「観察」と第3段階「解釈」を巡り論述した。残る第2段階と第4段階以降の考察は後篇に回し,最終段階で示した補充課題5個も次稿で詳述したい。

  • 奥西 麻由子
    2018 年 50 巻 1 号 p. 129-136
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究では,大学生に焦点を当て,芸術祭にどのような関わり方をしているのか,参加の仕方に関する調査を行なった後,事例として中之条ビエンナーレでの広報・宣伝活動の報告をする。具体的な大学生の芸術祭への関わりは,1.作品制作・展示,2.ボランティア・サポーター,3.ワークショップ,4.広報・宣伝に分類できる。主に美術系大学は1.作品展示に重点を置いている。しかし,美術教育やアートマネジメントを学ぶ学生にとっては,4.広報・宣伝の活動が効果的であるとされた。その理由は,広報・宣伝活動を通して,芸術祭の場において主体的に地域や作家,運営側と関わることでその仕組みを理解し,情報という形で対外的な場へ伝える活動が,作品と人を緩やかにつなぎ,他者に芸術祭の魅力を伝えることになるためである。このことは,大学生ならではの関わりが可能になると共に,芸術祭の一端を担う存在にもなる。

  • 小田 久美子
    2018 年 50 巻 1 号 p. 137-143
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究では,基盤研究をもとに描画発達への効果が期待されるシュルレアリスム作品と技法を利用して,イメージの生成に寄与する活動の実践的研究を進めている。継続研究である本論では,基盤研究にもとづきながら小学校図画工作科へのスムーズな連携を見込み,絵画作品を用いた鑑賞と子どもに親しみのある技法による表現を融合した造形あそびの実施と検証を行っていく。イメージの借用を幼児期の教育実践に取り入れることによって,絵を描くことに消極的な子どももそうでない子どもも同時に楽しく描画発達を促進する手だての有効性を確認する。

  • 香月 欣浩
    2018 年 50 巻 1 号 p. 145-152
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    美術に対する苦手意識は,どこから来るのかを調査,追求した先行研究は既にある。また苦手意識は,「人的な要因」が大きいという指摘もある。そこで本稿では,人的な要因の中でも「他者からの評価」に着目し,幼少期のものをつくることや絵を描くことに対する他者からの評価が,その後の造形表現の「好き」「嫌い」にどのような影響があるのか,学生を対象にアンケートを実施し分析を行なった。そして,幼少期に受けた他者からの評価と,その後の造形表現に対しての「好き」「嫌い」は関連しているという結果が得られた。本稿の結果から,造形表現に対して肯定的意識を持つ大人が増えれば,子どもたちは良好な他者からの評価を受けることが多くなり,ものをつくることや絵を描くことに対する意識が好循環していくことが期待できる。

  • 清田 哲男
    2018 年 50 巻 1 号 p. 153-160
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究は,児童・生徒が,自己の創造性を育むことを通して,未来を考え,地域社会で新たな価値や課題を発見し,それらの達成,克服のために,主体的な学習への姿勢を培うための小学校から高等学校までの長期的な美術教育カリキュラムの構築を目指している。構築にあたり,カリキュラムで育みたい四つの視点(自己の高まり,共感性,深く見ること,社会参画意識)を構造化した「創造性が社会と出会う美術教育Art Education Nurturing Creativity through Encounters with Society: ANCS」モデルの作成を試みた。モデルにおける題材の配置,育みたい力,日常生活での汎用性等の検討を,先行研究,並びに中学生への長期的な調査から行った。その結果,表現主題への意識を社会参画へと広げ,再び自己内面へ収束させる題材を繰り返すことが,四つの視点への中学生の意識と相関することが分かった。

  • 小池 研二
    2018 年 50 巻 1 号 p. 161-168
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    国際バカロレア(International Baccalaureate)中等教育プログラム(Middle Years Programme = MYP)では概念理解を重視し,探究的な学びを行っている。本研究の目的は,この考え方を中学校の美術教育に応用することにより,美術教育を通して,より深い概念的な理解が可能か検証することである。研究では,「事実的問い」「概念的問い」「議論的問い」の「探究の問い」に着目した。「探究の問い」を考えて制作をすることで,生徒の概念的な理解が深まり,美術を身近なものと感じられるかを調査した。アンケート等の調査の結果,多くの生徒は,「探究の問い」の内容について思考し,自分の意見を持つことができた。しかし,「探究テーマ」については,理解していない生徒も多かった。「探究テーマ」は「問い」に比べて思考する機会が少なかったことが挙げられる。このことから概念的な理解を生徒に求めるには制作と並行して「問い」や「テーマ」を考えさせることが有効であると確認できた。

  • 齋藤 亜紀
    2018 年 50 巻 1 号 p. 169-176
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本稿は佐藤忠良の教育について再考するために,佐藤の造形指導の意図がどのように授受されたのか,インタビューをもとに検討したものである。インタビューは東京造形大学の草創期に佐藤の教育を受け,後に彫刻家となった5人に協力を依頼した。佐藤は,この大学は具象を学ぶ学校であることを明言し,教育の目標を「高度な精神と技術1」を備えた自律した人間形成と考えていた。表現を試行するために身体を鍛えること,〈自然〉を自分の目と手で捉える訓練をさせることが第一義であると考えた。建学当初,この意図は学生と共に大学の歴史を作って行こうとする情熱によって様々に試行される。しかし,人体像を通して写実を学ぶことと〈佐藤の造形〉は混同され,造形指導の本来の意図とは異なり,齟齬を生じさせていった。〈佐藤の造形〉という表層的な問題と佐藤の造形指導の真の意図から,その授受を検討した。

  • 西丸 純子
    2018 年 50 巻 1 号 p. 177-184
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究は,東山魁夷の代表作,唐招提寺障壁画を題材として扱った村上通哉の実践に着目した。言語活動を媒介とし作家の文章,直筆,絵画に描かれた実景を介在させた鑑賞活動の実際を明らかにした。次いでそれらの詳細から生徒達が「心が吸い込まれるような」深い鑑賞体験を成立させた構造について,浜田寿美男の論「身体と表象の間で交わされる本質的な対話性」を軸に,考察を行った。結果,①作家の文章や直筆,絵画を感じ取り自らの思いを伝え合う対話構造,②作家と自身の視点を重ね合わせ追体験する対話構造,③作家の直接的な身体性が鑑賞者側に浸透する対話構造,④多様な視点の移動と重層化の過程で,対象と同化していった自己を省察する心象性が敷き写される対話構造が確認できた。これらの構造が重なることにより,東山絵画を貫く主題と深く結びついた本質的理解に迫る鑑賞構造が成立したと考えられる。

  • 佐藤 絵里子
    2018 年 50 巻 1 号 p. 185-192
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,1960~70年代のアイスナーの研究に注目し,その間にどのような経過を辿りつつ,芸術教育に適合した教育評価論が形成されたのかを明らかにすることである。その際,特に「表現目標」と「指導目標」,「教育批評」と「教育的鑑識眼」等の重要概念やその形成に影響を及ぼした思想的背景を調査した。16の論文に対する5つの観点による分析の結果,彼の教育評価論がデューイ理論の多大な影響を受けていることや,科学的教育への批判に基づいて新たな評価論のパラダイムが形成されたことが明らかとなった。教育の結果説明責任に対する要請の高まりが顕著となりつつある現在,これらの概念の意義を再考することを通して,個人の感性や現場の特殊性を生かしつつ,それを一般性にまで高めるボトム・アップの理論形成を行うことや,政策的決定や文化形成へ主体的に参加することを目指していくことが重要である。

  • 佐藤 寛子
    2018 年 50 巻 1 号 p. 193-200
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    平成29年告示の幼稚園教育要領では「幼児期までに育ってほしい姿」として「(10)豊かな感性と表現」が示された。これは5領域のねらい及び内容に基づく活動全体によって育まれる。一方,教師の指導法を評価し,指導計画の改善を図ることも求められた。指導法の評価は教師のみとりに始まる。そこで本研究では,領域「表現」のねらいである「豊かな感性」のみとりについて,(1)現行の幼稚園教育要領解説と(2)遠藤の「感性の6態様」から具体的な観点を導出し仮設した。事例を通して(1)と(2)を検証した結果,感性の各発達過程は包含関係にあり,「感性の共有・明確化」を中継として多方向に働くこと,感性の価値化は6態様が相互に関わり,分化と統合を繰り返しながら質的変化することが明らかになった。そして,他者の感性の働きかけに対して,実感を伴う体験や自分の感性での捉え直しが価値化へは必要であることが浮き彫りとなった。

  • 佐原 理
    2018 年 50 巻 1 号 p. 201-208
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    米国のナショナル・スタンダードでは2014年にNCCASによって芸術科のカリキュラムが改訂されメディアアート領域が導入された。新ナショナル・スタンダードは現在各州のスタンダードへと伝播する過渡期にあると思慮される。参考にした公立高等学校教育現場では授業運営の課題は設備投資のための予算確保であるとされた。そのためにCTEなどの職業技術教育カリキュラムに基づく州の助成金を活用しており,メディアアートは職業教育としての色合いを強めている。また,そうした職業技術教育においても単純な専門技術教育に陥ることなく,P21が求めるような汎用的スキルの育成が重要視され,キャリアの形成とともに大学などの高等教育機関への進学も前提にしている点は特徴的である。実社会に即した教育実践により,映像が果たしうる役割について普く理解を深め,映像の社会性にそって授業展開をおこなっている点は我が国の美術教育にとっても参考にできる。

  • 清水 由朗
    2018 年 50 巻 1 号 p. 209-216
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本稿は,日本画材料によるデカルコマニーを使った,児童・生徒の連想イメージ生成と形象化プロセスの研究である。筆者が所属する,公益財団法人日本美術院では,2014年度から「地域連携教育プログラム」を実践している。その一環として,2017年6月にロシア大使館内学校および台東区内の公立小学校で日本画体験授業の実践を行った。その際,児童・生徒の連想イメージがどのようにして生成し,形象化するのかを,観察とビデオ記録によって質的に分析した。手立てとして用いたのは,日本画材料によるデカルコマニーであり,デカルコマニーによって現れる意識しない色やかたちからイメージが生成,形象化するプロセスを個別に追った。その結果,デカルコマニーによってできる色のにじみや色点の濃淡が「見立て」というイメージ形成に影響し,その影響が加筆・形象化の違いにも繋がっていることが認められた。

  • 清家 颯
    2018 年 50 巻 1 号 p. 217-224
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    美術教育に関する研究では,子どもがものをつくる姿を,意味を生成し,新たな〈私〉と出会う姿として,また,身体性により世界へ働きかける姿として様々に捉えてきた。このように,子どもが,他者やことば,置かれた状況などからあらゆる生成を準備する姿は,一方で,他者や環境により創出される固有の時空に取り巻かれて生きる姿ともいえる。これらから,この生きられた時空で,子どもが〈私〉を見失うことなく,生きる根拠をつくりあげる姿には,子どもに絶えず生成される創造的な意志の問題が関わっていると考えることができた。そこで,本論では,図画工作・美術の時空における“コード”を捉え,先行研究や文献の考察から,子どもの行為による生成局面とコードの概念を再考した。そして,これらの考察の結果,生成の可能性をもつ機関としてのコードと,常に〈私〉を生きるための意志生成の可能性が明らかとなった。

  • 立原 慶一
    2018 年 50 巻 1 号 p. 225-232
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本実践研究の興味・関心は,生徒が特定の絵画理念(物の見方,たとえば印象派やキュビズムの理念)を絵の主題把握といかに関わらせ,どのような形で捉えるのかにある。ここで鑑賞能力は両者の絡みで働くが,その作用の様態は低位者が行う分断的把握と,高位者が行う絵全体・表出内容的なそれとの間で,違いが出ることが考えられる。絵画鑑賞では,主題感受は本絵を基礎づける絵画理念の感受と情趣の面で遊離的ではなく,連携的になされるべきなのである。全体としてまとまった鑑賞体験の中に,絵画理念が価値づけられることの大切さを,私たちは理論的に自覚した。題材設定をめぐって美術教育学の立場から,より良い価値判断の基準がここに得られたのである。

  • 手塚 千尋
    2018 年 50 巻 1 号 p. 233-240
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究は美術教育における「協同的な学び」を「協同的創造」の学習活動と定義し,アート(美術)による協同的問題解決の学習活動として取り組むための理論構築及び方法の検討を目的としている。本稿は,デザインベース研究(design-based research; DBR)に則り,前稿で再検討した仮説理論に基づく実践の相互作用分析を通して,協同的創造による問題解決場面から10の要素を抽出し,「協同的創造」の3つの学習環境デザイン原則を導き出した。1)構成員が集団的責任を認識し,役割の発見ができること,2)ことばと視覚の対話によるアイデアの生成と共有ができること,3)アイデアの多様性の保証と発展を実現することである。今後は,協同的創造による問題解決の各場面で発揮される「スキル」を明らかにし,アート(美術)の協同的創造の学習活動で育成できる資質・能力を含むコンピテンシーを検討していく。

  • 寺元 幸仁
    2018 年 50 巻 1 号 p. 241-248
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究では,教師が体験的に「造形遊び」の教育的意義に気づくことをねらい,参加者が遊ぶこと自体を目的とした体験(「遊びなおし」体験と呼ぶ)を組み込んだ「遊びなおし研修」に取り組み,参加者全体に見られる効果と課題を示してきた。今回,本論文では,参加者全体ではなく,それぞれの参加者に視点を移し,「造形遊び」に対する意識の変容を分析し,「遊びなおし研修」の効果と課題を示した。分析手法として,大谷尚が提唱する質的データ分析手法SCATを用いた。結果,「参加者自身の指導観の原点と向き合う」「子ども主体の指導観への転換」「実践への意欲向上と創意工夫」「評価に対する不安の軽減と疑問の課題化」等,「遊びなおし研修」の効果を示すことができた。また,多忙化の中,「教師が主体的に『造形遊び』について学ぶ機会の設定と継続的取り組み」等のさらに追究すべき課題も示し,今後の研究に向けた展望を得た。

  • 富田 俊明
    2018 年 50 巻 1 号 p. 249-256
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    絵画表現の指導には無限の方法論がありえるが,本論であつかう卒業制作の事例では,学生本人が,画面に現れるイメージを自ら展開させ,その意味を理解していくことを重視した指導を行った。その結果,制作者と指導者の予想を超えるイメージが画面に出現することになった。制作者の文脈に深く根ざした創作と自立を援助するには,審美的で批評的な空間よりも,解釈を留保し,未知のイメージが出現しうる対話的で保持的な空間が求められる。本論ではこのようなイメージ探求型の創作をアルケミカル・プロジェクトと捉え,その錬金術的変容が指導者側にも感染する過程を読み解き,制作者/指導者の分裂のみならず作品主義/人格形成という美術教育の分裂をつなぐような絵画表現の対話的指導の可能性について,重層的に考察する。

  • 中川 三千代
    2018 年 50 巻 1 号 p. 257-264
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    1922年にフランス人美術商エルマン・デルスニスは,「仏蘭西現代美術展覧会」(通称「仏展」)を東京と大阪で開催した。仏展は1931年までほぼ毎年開催された。1924年には,第1回仏展から日本側で実務を担当した黒田鵬心との共同経営で日仏芸術社が設立された。日仏芸術社は仏展の運営と共に,美術月刊誌『日仏芸術』の発行,画廊の経営など,多彩な事業を展開した。なかでも,東京・大阪以外の地方都市へ出向いて開催されたフランス美術展(地方展)は,日仏芸術社設立直後から企画され,当時としては他に例のない活動であった。地方展は,デルスニスよりも黒田鵬心が主導した展覧会として特徴的である。本稿では,日仏芸術社のすべての地方展を対象として,開催場所,開催規模,入場者数,付帯事業として行われた講演会などを解明し,日仏芸術社の地方展が美術鑑賞の普及に果たした役割について考察する。

  • 根山 梓
    2018 年 50 巻 1 号 p. 265-272
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本論文は,現在の北海道新聞社の前身である北海タイムス社が発行した『北海タイムス』に掲載される記事に基づき,大正10年(1921)における同社による自由画教育に関する取り組みを明らかにするものである。北海タイムス社で美術部員であった澤枝重雄は,大正10年のはじめ頃に紙上で「自由画私見」を発表し,7月から紙上で児童自由画の講評を行うことをはじめ,11月に同社がはじめて主催した児童自由画展覧会においては,札幌の小学校教員とともに講演を行い,展示作品の講評を行うなど,中心的な役割を担った。大正10年に紙上に掲載される図画教育に関する一連の記事からは,当時,澤枝が図画教育に対する小学校教員の意識に働きかけることを重視し,札幌の小学校教員との関わりのなかで,指導者としての立場で発言していたこと,また,当時,札幌の小学校教育現場において,自由画教育に対する関心が高まっていたことが確認される。

  • 野村 亮太, 有原 穂波, 八桁 健, 小澤 基弘, 岡田 猛
    2018 年 50 巻 1 号 p. 273-280
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,図工教育において児童の版画作品を見取る視点および指導方法を構成する具体的な手立てを提案することであった。作品を見取る視点を実際の視線行動と関連づけて調べるために,美術科教員4名と教育実習を経験した大学生4年生10名を対象に,図工の授業で創作された児童の版画作品を呈示刺激にして視線計測を行った。また,版画から読み取った情報から指導手順を構成し,ロールプレイしてもらった。実験の結果,視線の停留時間や移動時間に差はみられなかった。だが,視線移動の距離や時間のばらつきは美術科教員の方が小さく,また,大きな視線移動は美術科教員の方がより規則的な時間パターンで生じていた。また,美術科教員は授業の流れや使った素材,児童の創作過程を幅広く推測できるだけでなく,発想の展開,構図の決定,イメージを実現するための加筆といった造形に重要な観点を含んだ働きかけをしていた。

  • 橋本 忠和
    2018 年 50 巻 1 号 p. 281-288
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    新学習指導要領において導入される小学校のプログラミング教育の事例に図画工作科が取り上げられているように,幼稚園教育においても園児の造形活動の良さとプログラミング教育の強みが相乗効果を生むような表現領域の活動内容を探る必要があると思われる。そこで,本研究においては先行研究や北海道函館地区の教師と幼稚園保護者を対象にしたアンケート等から幼稚園教育でプログラミング思考を育成する効果と課題点を分析した。そして,その分析と「アンプラグド・プログラミング教育」や「クリエイティブ・ラーニング・スパイラル」理論と園児の造形活動事例との接点から幼稚園における造形活動を軸にしたプログラミング思考育成の可能性を考察した。すると,園児の造形活動のプロセスと「シーケンス・ループ・ディバッグ」等のプログラミング思考や「クリエイティブ・ラーニング・スパイラル」との類似性を見出すことができた。

  • 畠山 智宏
    2018 年 50 巻 1 号 p. 289-296
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究では,保育士・幼稚園教員と小学校教員が,幼少期から現在までの図工・美術に対する感情の変遷を,時間軸に沿った線とそれに添えたエピソードにより表した「感情曲線」を分析した。その結果,感情曲線全体の平均の形状からは,幼少期の高い肯定感が10代半ばにかけて肯定・否定のない状態まで下降するが,大学生時に大きな回復を見せ,就職後も肯定感の緩やかな上昇が40歳頃まで続き,その後もその肯定感を維持しながら推移することが明らかになった。個々人の形状には個人差が大きく現れ,10パターンが認められた。また,大学生時以降では,大学での授業が感情回復の大きな機会になっていること,就職後も約8割が何らかの感情の変化を示すことが明らかになり,さらに,保育士・幼稚園教員と小学校教員の間でも平均の形状や大学生時,就職後の推移のパターンに傾向の違いが示された。

  • 蜂谷 昌之
    2018 年 50 巻 1 号 p. 297-304
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本論文は,高岡市立博労小学校に所蔵される明治40年代に制作された約600点の図画作品を手掛かりに,一地方の学校における図画教育実践の検証を試みたものである。まず,明治後期の図画教育の状況をふまえ,学校関係資料等を参考に図画の指導体制や使用教科書,教育活動等に関する調査を行った。その上で,明治後期に制作された作品の画題や表現方法を分析し,当時の図画教育実践を考察した。調査の結果,同校では創校当初より図画の授業が行われるとともに,地域事情を反映して専科指導体制が構築されたこと,国定教科書『毛筆画手本』,『新定画帖』を手本とした臨画や考案画が残されていたこと,などが明らかになった。作品には図版をそのまま模写したものだけでなく,別の図版を合成したものや児童自らアレンジを加えたものがあり,表現の応用を許容するような実践が行われていたことがうかがえた。

  • 松井 素子
    2018 年 50 巻 1 号 p. 305-312
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    美術科教育では子供たちの感性を豊かにするという目標に対し,個人の作品の制作過程や,相互鑑賞活動等に重点がおかれてきた。しかし,協同的な学びとしての共同製作は戦前から存在し,昭和21(1946)年,戦後初の通達にも「つとめて共同製作を多く課し,協力して働くという精神を養成すること」との文言があり,現行の学習指導要領にも言及されている。そこで,美術科教育における共同製作の働きを明らかにするために,図画工作科の教科書二社について,戦後70年間の全教科書240冊から共同製作を表にし,各教科書の全題材中に占める割合をグラフ化した。現代の子供たちに必要な資質・能力を育む共同制作題材の可能性について,ジョンソンらの提唱する協力学習法の効果に基づき分析し,今後さらに複雑化する社会の問題をグローバルな視点で捉え,協力して取り組む姿勢を伸長する共同製作の題材開発の必要性を考察する。

  • 松浦 藍
    2018 年 50 巻 1 号 p. 313-320
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究は,絵画作品鑑賞において,色彩の感情効果学習が生徒の絵画作品鑑賞に与える影響を考察したものである。筆者が指導する生徒308名が,9週にわたり授業開始10分間,週1作品の郷土作家絵画作品を鑑賞した。その上で生徒が絵画作品の題名とその根拠を思考し,作品の主題を予想した。郷土作家絵画鑑賞のワークシートの中から,生徒が記述した造形要素に関する単語数をカウントした。10分以降の授業において,9週の内4週を色彩の感情を考える表現活動や鑑賞活動に充て,造形要素等の記述に見られる傾向の推移について考察を行った。その結果,色彩の感情効果学習を経ることで,生徒が絵画から受け取る主題の根拠として挙げた造形要素やイメージの広がりを示す記述が増えていた。このことから,絵画からイメージすることに課題がある生徒が,自分の考えをまとめ表現する手立てとして色彩の感情効果学習が期待できることが分かった。

  • 松本 美里, 髙橋 敏之
    2018 年 50 巻 1 号 p. 321-328
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本論は,幼児期における模写的活動の教育的妥当性と近接領域の研究動向について考察する。「学び」の語源が「真似び」であると言われているように,他人を真似ることは学習の第一歩である。特に幼児期は,周囲の幼児や大人の言動を真似ることによって学習する時期であることから,模倣学習に焦点を当てて論考する。本論では,幼児が行う「模写」は,描画能力の未熟さや独創性の表れにより,モデルの模倣を基盤として独創的な作品へと変容することから,「模写」ではなく「模写的活動」と定義する。先行研究から,幼児の図形描画能力に見られる発達を明らかにした上で,幼児期における描画の特徴として,G. H. Luquet(1927)の「視覚的写実性」と模写的活動の関係について考察を進め,「知的写実性」から「視覚的写実性」への過渡期である幼児期に模写的活動を行うことの意義について検討する。

  • 真宮 美奈子, 竹井 史
    2018 年 50 巻 1 号 p. 329-336
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究では,これまでの土素材の工学的研究をもとに,粘土質土(利用土)を使って幼児が遊べる「ねんど場」をA保育園の園庭に設置した。5歳児がはじめて「ねんど場」を体験する際の遊びの様相とその中での学びに着目し,「ねんど場」及び粘土質土(利用土)の保育教材や保育環境としての可能性を探った。その結果,①「粘土質土(利用土)」が子どもの造形活動を活性化すること,②「粘土質土(利用土)」を活用した遊びの中には,これからの幼児教育において重要視されている「主体的・対話的で深い学び」が多分に含まれており,学びを支える保育者の役割が明らかとなった。このことから,「粘土質土(利用土)」を用いた「ねんど場」等での土遊びは,新幼稚園教育要領や保育所保育指針等の重要な課題に応えられるものであり,保育教材や保育環境として教育的に価値が高いものであることが確認できた。

  • 水野 裕史, 佐々木 あきつ
    2018 年 50 巻 1 号 p. 337-344
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本稿は,二条城松鷹図を題材に,高精細複製文化財を活用した鑑賞教育について,効果と評価を論じることを目的とする。検証にあたっては,美術鑑賞の授業を設定し,授業中に記入したワークシートの分析をおこなった。授業目標は,絵に込められた意味や絵のもつ政治性について,楽しみながら知ることである。現代の人口に膾炙する「美術」の語は,自律的で自由,時に難解なものをイメージさせるが,古美術を鑑賞する際には,このイメージが大きな障害となる。日本の文化財を楽しむためには,鑑賞の前提にある当時の絵に対する認識,つまり象徴性や政治性について正しく伝える必要がある。内容は難解だが,高精細複製文化財の再現力が助けとなり,中学生にも理解ができた。また,熊本地震直後という時機から文化財保護についても言及したが,こちらも教科書やプロジェクター投影にはない高精細複製の臨場感が,理解を助け,教育効果をあげた。

  • 村上 佑介
    2018 年 50 巻 1 号 p. 345-352
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本稿はサイト・スペシフィックという概念をキーワードに,筆者自身が立体造形ワークショップを実施し,その成果や課題について考察するものである。筆者は,2016年,2017年に大阪市で行われたアートイベント「キッズ・ミート・アート」において,粘土と木を使ったワークショップを行い,それぞれの参加者を対象としたアンケートを実施,考察した。その結果,参加者が作品と場との繋がりを,モチーフや素材といった造形要素を通して感じていることや,素材の採集,制作,展示を行う一連のプロセスが,場というものを身近に感じさせ,芸術が日常からの延長上で行われる行為であるという認識を促していることが分かった。企画者の想定した結果に収まってしまうという問題を孕んでいるものの,サイト・スペシフィックな立体造形ワークショップは,芸術と日常との溝を埋め,芸術と人とを繋ぐことが期待できる。

  • 本村 健太
    2018 年 50 巻 1 号 p. 353-360
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    2019年のバウハウス創立100周年を目前にして,バウハウス研究において筆者がこれまで継続してきたバウハウス神話を「脱神話化」するための歴史的考察と,バウハウスの「諸芸術の統合」及び「芸術と技術の融合」という芸術的理念を今日に引き継ぐ事例研究として取り組んだ筆者の映像メディア表現の実践を再確認するとともに,現代にまで有効なバウハウスの理念を再考し,バウハウス研究を基礎とする今後の実践的展開を示した。バウハウスに学び,未来を見据え,新しい展望によって造形における提案や解決を行う姿勢を「ニューヴィジョン」と設定し,昨今の「望ましい未来」を提案する「スペキュラティブ・デザイン」などに同様の姿勢をみた。その実践として著者が学生とともに参画し,成果を残した「岩手発・超人スポーツプロジェクト」を紹介するとともに,このテーマで思索するための「ペラコン課題」を教材化の事例として提案した。

  • 守屋 建
    2018 年 50 巻 1 号 p. 361-368
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究は図画工作科での汎用的資質・能力育成のためのカリキュラム・マネジメント研究である。これからの社会において汎用的資質・能力の育成は急務である。そこで,図画工作科の授業において,子供たちが友達と協力して課題解決にあたる姿から,コミュニケーション力の育成と,図画工作科の教科の本質という二つを両立させる為の研究を行った。この二つは決して分けて考えるものではなく,学習の場において同時に顕在化されるものである。そのために子供たちが関わり合うために学習環境におけるどのようなメディアが効果的か考察をしていった。対象は4年生で,1年間に行った複数の題材とその学習感想,各学期末の学習感想,そして,教師の観察からから検証を行った。学習感想から友達との関りや協働性が読み取れる部分を数値化し,表にした。そこから題材配列をするための妥当性と,教師の手立ての効果などを成果として明らかにした。

  • 八木 遼蒼
    2018 年 50 巻 1 号 p. 369-376
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究は,学校美術教育においてイメージの構想や内面世界を表現するのが苦手な生徒に,イメージ発想を補助するために開発した「コラージュ・ドローイング」を絵画制作の前段階に活用することで,イメージの構想,自己表現が育成されるか,その効果を明らかにすることを目的とする。生徒が豊かな発想や想像力を働かせ,独創的な絵画を表現するためには,制作主題を明確にすることが重要である。この観点から「コラージュ・ドローイング」の活用が発想を誘引し,個々の主題の形成を作り出し,内面世界の着想につながるかを検討した。その結果,「コラージュ・ドローイング」が発想を喚起させ,主題形成を生み出すことが示され,個々の画面構成と画面展開するための有効な手立てであることが示唆された。さらにこの手法の理解が次回作への意欲的な取り組む動機とつながり,絵画制作の造形的拡がりを展開させる実践事例の考察をおこなった。

  • 八桁 健
    2018 年 50 巻 1 号 p. 377-384
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究は,大学のドローイング授業で継続的に実施された省察の効果を検討することを目的とした。研究の第1に,授業に継続的に出席していた学生の事例を取り上げ,各学生と教師との対話内容を質的に分析した。研究の第2に,この授業を受講した学生の表現に対する態度や動機づけの変容を,計2回の質問紙調査により明らかにした。研究の第3に,制作されたドローイングを初期,中期,後期に分け,表現主題の自覚と技能を他者が評定し,その変化を検討した。研究の第4に,授業前後における,学生の他者作品鑑賞時の視線の動きを測定した。研究の第5に,学生が自分と他者のドローイングについて記述した授業感想文をテキストマイニングすることにより,表現方法や芸術表現の捉え方等の芸術創作プロセスに対する学生のイメージや態度の変化を検討した。以上から,本授業の学生の学びのプロセスの共通性を明らかにした。

  • 和田 学
    2018 年 50 巻 1 号 p. 385-392
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究の背景は,1960年代の米国にあらわれた美術批評教育における批評プロセスにある。本研究は,理論的背景として,質的探究により影響を受けて研究者により提案された批評プロセスの特性を明らかにすることにある。研究方法としては,研究者同士の観点と共にプロセスの特性を比較するものとする。その対象は,1967年に質的探究のプロセスを背景とし,批評行為として発表されたモデルである。

  • 王 宇鵬
    2018 年 50 巻 1 号 p. 393-400
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    1927年の台湾美術展覧会以降,西洋画と東洋画は画壇において伝統的文人画の地位に取って代わり,画壇の新しい主流となった。その理由は美術教育と密接な関係がある。本稿は台北師範学校の美術課程の特徴,そこで教えた日本人美術教師の影響を中心に日本統治時代の美術教育が台湾の近代美術において果たした役割について考察する。結論は次のようにまとめることができる。1,美術教育は台湾近代美術の発展を促進した。新たな美術教育方法は,教育の面から台湾美術と中国美術の間のつながりを切断した。2,日本統治時代,師範学校の美術教育の特徴は画家の育成を主な目的とする専門教育ではなく,普通教育の一環とされていた。画家の育成は課程内容と関係なく,日本人美術教師の手腕によってなされたことが推測でき,一重に学生と美術教師の両者が共に努力した結果であった。3,日本人美術教師の影響は,台湾近代美術の啓蒙時期に非常に重要なものであった。

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