美術教育学研究
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現代フランスにおける乳幼児期の芸術活動・芸術教育
―実践事例から考える子どもの美的経験―
小笠原 文
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2019 年 51 巻 1 号 p. 105-111

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抄録

フランスにおいては,芸術のもつ教育的な潜在力によって学習システムを再構築するという試みが加速している。現在フランスにおける子どもの芸術活動では,芸術家(あるいは芸術)の自律性が最も重要視されているが,本稿では実践事例をもとに,芸術活動という経験を通して子どもの内面に生起する変容に着目する。その上で,子どもたちにとっての美的経験および,その美的経験をもたらす芸術家について考察を行うものである。芸術活動は常に自己の内面に問いかけ自分と折り合う全体的な統一体を構築し,内面の調和の確立,美的経験をすることに意義がある。芸術家のもつ内面性は,子どもの自発的な追求に対し,受容と独特の聴取を可能にするものであり,芸術家は外面的なことではなく,子どもの内面的な人格との対話者なのである。いわば,参与アーティストの立場は「純粋な贈与者」としての教師であると考えられる。

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© 2019 大学美術教育学会
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