2019 年 51 巻 1 号 p. 313-320
本論は,色彩の感情効果を学ぶ活動(以下,色彩感情効果学習と表記)が,その後の生徒の表現活動に与える影響を検討するものである。影響の調査のために,色彩感情効果学習を経験した生徒と,経験していない生徒に,有彩色(絵の具)を用いた着彩活動と,無彩色(鉛筆)を用いたドローイング活動をさせた。その上で,使用した絵の具数,混色の有無,描画対象物の再現性等を調査し,造形的な工夫の傾向を考察した。その結果から,色彩感情効果学習は,主題を説明的に表現するのではなく,想像した内容を表現する傾向を強め,その傾向は一定期間持続することが分かった。しかし,混色によって色数を広げることとの相関は無かった。一方,色彩感情効果学習をせずに,着彩活動だけの経験をした生徒は.混色によって色数を増やす傾向はあるが,主題からイメージを広げる傾向は確認できなかった。