本論は,生活画に焦点を当て,保育実践における描画活動を対象とする国内の研究の動向と課題を明らかにするものである。先行研究を概観し,先ず幼児の描画活動に対し,発達段階の観点が大きく影響していることを述べた。次に,先行研究で明らかになっている幼児の描画活動全般の特徴について,それぞれの特徴の意味を生活画に限定して改めて論じる必要があることを述べた。さらに,これまでの学術研究が,描画活動における保育者の援助の改善に十分に還元されておらず,その背景に実践者と研究者の関係性が影響していることが推察された。最後に,生活画を描くことで生じる幼児個人の学びを明らかにするだけでなく,学級全体や保育者にとっても,生活画の活動にどのような意味があるのかを明らかにする研究が求められていることを述べ,保育実践における生活画の活動の位置付けを体系的に論じることを今後の課題として挙げた。