2022 年 54 巻 1 号 p. 89-96
本研究は,人の無意識的な行動に着目することで,価値発見力の向上を促すプロダクトデザインの鑑賞について考察した。研究方法としては,人の行動を誘発させるアフォーダンスに関する先行研究について整理し,本研究におけるアフォーダンスの概念規定と「知覚されたアフォーダンスの発見モデル」の提示を試行した。アフォーダンスを応用した実践研究として,中学3年生に対して「日常生活の中でペットボトル(の水)を『飲料水として認識していない瞬間』について発見する」ことを目的としたデザインの鑑賞授業を実施した。認識していない瞬間を発見するためには,「人の付帯状況に着目すること」と仮定し,生徒に配布する鑑賞ワークシートに手立てを講じた。その結果,鑑賞者の付帯状況によって知覚されたアフォーダンスが変化し,プロダクトデザインから多様な価値が発見されることが示唆された。