本論文はインドネシアの中学校美術教育について考察している。インドネシアは多民族多文化社会であり,各民族の有する伝統文化を基盤に西洋文化の影響を受け,自国の文化を形成してきた。そうした状況下,世界の教育は内容の教授からコンピテンシー(資質能力)の教育へと変わりつつある。多様な美術文化を持つインドネシアで,中学校の美術教育は美術の何を教授し,どのような資質能力の育成を行うのかを考察した。インドネシアの伝統美術から現代美術までを総体的構造的に捉え,それらを背景に,現行の教育課程の考察,それに基づく最新の教科書教材の分析を行った。そして多民族多文化社会における美術教育の教材とコンピテンシーの関係のモデルを提案した。