都市地理学
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発刊に寄せて
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2006 年 1 巻 p. 1-

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発刊に寄せて

本日『都市地理学』の創刊号を発刊することができた.ここに日本都市地理学会の創設と発刊に至るまでの経緯を簡単に記しておきたい.

2003年の8月中旬に,神谷浩夫(金沢大学)を代表とする科学研究費グループが韓国でフィールドワークを行った.阿部もその一員として同行した.その時,研究の合い間の雑談で伊藤悟(金沢大学)が「日本でも都市地理学の専門誌があるといいですね」といった趣旨の発言を行った.アメリカには既にURBAN GEOGRAPHY誌があり,韓国でも韓国都市地理学会が結成されていて専門誌を発行していた.

長い歴史をもつ日本の都市地理学界が専門の学術誌持っていないことが不思議に思え,一気に日本でも創設しようではないかという思いが高まった.とくに若い世代の人にとっては専門誌が絶対に必要だという意見もでた.海外でも高揚した気分もあったのかもしれない.あるいは高揚したのは阿部だけであったかもしれない.

帰国して日本地理学会会員名簿などで都市研究に関心を持っている人を数えあげていくと戦後生まれの人だけでも400名近く存在することがわかった.年1冊の刊行として費用はいくらかかるか,そのためには何人の賛同者がいればよいかを計算したところ,100人の参加があれば何とかやれるのではないかという目途がたった.

善はいそげである.早速,下記のような設立(趣意書)と入会のお願いを作成し2003年8月29日に先の400余名の方に郵送した.細かい経緯は省略するが,半年ほどの間に100名をこえる賛同者を得たので,2005年度末に創刊号を出すことに決定する.

2005年度末の発刊を決めたものの解決しておくべき課題がいくつかあった.会の名称は日本都市地理学会とはしたものの,会としては規約をもたなければならないし,会長・副会長がいなくてはならない.本来,これらは会員による討議と選出にもとづくものである.しかし,現実問題として誕生したばかりで体力のない学会にとっては,いずれも簡単なことではない.そこで提案者の我がままを許していただくというかたちで,規約は阿部が作成し,会長は富田和暁(大阪市立大)に,副会長は小林浩二(岐阜大)に依頼した.両氏からはご快諾をいただき,阿部が起草した規約原案をご検討了承していただいて,善賛同者に配信した.事務局は阿部が引き受けることにしたが,協力をしていただく,いわば委員会が必要となる.賛同者の中の山崎健(神戸大),伊東理(金沢大),津川康雄(高崎経済大),山本健兒(九州大),箸本健二(早稲田大),小田宏信(成蹊大),西原純(静岡大),由井義道(広島大)各氏に打診し,いずれもご快諾をいただいて事務体制はまがりなりにも整った.

学会創設の最大の目的は私学の発展を目指すことであり,そのためには機関誌をもたなくてはならない.機関誌の性格をどのように規定するかということも大事な問題であるが,2つの性格をもたせることにした.1つは日本語のほかに英語・フランス語・ドイツ語・中国語・ハングルで書いてよいとした.もう1つは既発表の原稿をベースにそれに加筆したものでもよいとしたことである.

この日本都市地理学会創設の提案については,会の運営継続などを心配して下さる声も寄せられたが,圧倒的に支持激励の方が多かったことも記しておかなくてはならない.その中の「レフェリー制度を必ず採用すること」という意見は最も大事なものの1つであり,本会誌は複数のレフェリーが査読するシステムを採用している.

歩きはじめたばかりの学会であり,まだ大会開催の目途もたっていない.しかし,近い将来,外国の都市地理学会との共同研究会開催など夢は膨らむ.そのためにも会員の方々の積極的なご支援,とくにご投稿をお願いしたい.良質の論文を掲載すること,それた学会創設の唯一にして最大の目的だからである.

日本都市地理学会の設立(趣意書)と入会のお願い

謹啓

第2次世界大戦前はもとより、戦後も1950年代まで都市地理学は日本の地理学界において中心的な分野であったとはいえません。しかし、20世紀の後半、とくに1960年代に入って日本の都市地理学は大きく発展しました。そして、今日、研究者の数のみならず学術誌に発表される論文数や著書数においても、今や地理学界の中で最も重要かつ中心的な分野になっているといっても過言ではありません。

それにもかかわらず、わが国において都市地理学の学会や専門誌がこれまで存在しなかったことは不思議な気さえいたします。そこで、私たちは日本都市地理学会の設立を企画し、多くの方のご入会を切望するものであります。やや遅きに失した感さえしますが、今をのがせば学会の設立がより困難な状況になることも、また確かであると思われます。

都市地理学、とくに日本の都市地理学の課題は様々あるものと思われますが、学会設立の趣旨は一言でいえば、広く自由に都市地理学の研究成果を発表できる場をもつということに尽きます。細かい点につきましてはこれから決めていくことになりますが、この基本方針をもとに日本都市地理学会の設立を企画しています。どうか趣旨をご理解いただき、多くの方にご入会していただくことを、お願いする次第です。

敬白

日本都市地理学会の設立(趣意書)と入会のお願い

謹啓

第2次世界大戦はもとより、戦後も1950年代まで都市地理学は日本の地理学界において中心的な分野であったとはいえません。しかし、20世紀の後半、とく1960年代に入って日本の都市地理学は大きく発展しました。そして、今日、研究者の数のみならず学術誌に発表される論文数や著書数においても、今や地理学界の中で最も重要かつ中心的な分野になっているといっても過言ではありません。

それにもかかわらず、わが国において都市地理学の学会や専門誌がこれまで存在しなかったことは不思議な気さえいたします。私たちは日本都市地理学会の設立を企画し、多くの方のご入会を切望するものであります。やや遅きに失した感さえします。今をのがせば学会の設立がより困難な状況になることも、また確かであると思われます。

都市地理学、とくに日本の都市地理学の課題を列挙しますと、次のような諸点が挙げられるかと思います。① 日本の都市の特徴を究明すること ② 日本の都市と外国の都市との類似性・同質性と相違性・異質性を究明すること ③ これまでの都市地理学の重要な理論は、すべてといってよいほど外国の研究者によるものでありました。日本の都市地理学はこれらを学び、移入し、適用することによって発展してきた側面が大きい。このこと自体は評価すべきことでありますが、やはり、われわれ自身も実証研究のみならず理論の構築という姿勢を持つべきであると思います。④ この点と関係しますが、今後はもっと外に向けて成果を発信していく必要があるでしょう。もちろん、これまでも外に向けての成果の発信は行われてきましたが、今後はより一層強めていかなくてはならないと思います。この外というのは外国のみならず他学界をも指すことは言うまでもありません。⑤ 以上の点は表現をかえれば、都市地理学の日本学派の設立を目指すということにもなろうかと思います。

以上のような考えをもとに、日本都市地理学会の設立を企画しています。これまでは戦後生まれの世代を中心に話をしてきました。その結果、以下のように発起人として多くの方々のご賛同を得ましたので、より広く賛同者を募ることにいたしました。どうか趣旨をご理解いただき、多くの方にご入会いただく、ここにお願いする次第です。

敬白

阿部和俊

 
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