都市地理学
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論説
  • 下谷・根岸・東日暮里を事例に
    藤塚 吉浩
    2022 年 17 巻 p. 1-
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/02/13
    ジャーナル フリー
    本稿では,東京の都心周辺部である台東区下谷・根岸と隣接する荒川区東日暮里におけるジェントリフィケーションと都市景観の変化について検討し,次の三点を明らかにした.第一に,東京におけるジェントリフィケーションの変化について,管理,専門・技術職就業者数の増減を指標として検討し,2000年代後半は中央区や港区で管理,専門・技術職就業者数は増加したが,2010年代前半は都心から離れた墨田区や荒川区,豊島区などで増加したことを明らかにした.第二に,台東区下谷・根岸における都市景観の変化を検討し,金杉通り沿いに多かった町家と路地に面した長屋の多くが失われ,高層共同住宅が増加したことから,歴史的な町並みを守ることは容易ではなく,下町の風情をいかに保つかが重要と指摘した.第三に,荒川区東日暮里における高層共同住宅建設に伴う建築紛争について考察し,荒川ルール条例による地域関係者会議における協議によって,近隣への影響が緩和されたことを示した.今後ジェントリフィケーションが拡大すると,周辺の地域に立地する産業の操業環境との調和をどのように実現できるか検討が必要となる.
  • 池田 千恵子
    2022 年 17 巻 p. 10-
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/02/13
    ジャーナル フリー
    本稿では,兵庫県豊岡市城崎温泉において外国人宿泊客が急激に増加した理由と外国人宿泊客の増加に伴う地域への影響について検証した.地域に及ぼす影響については,ツーリズムジェントリフィケーションの観点で検証を行った.城崎温泉では,人口が減少し老年化指数が上昇する中,過疎対策として,外国人向けの宿泊予約サイトの開設やPR動画による情報発信などのインバウンド施策を実施した.その結果,外国人宿泊客が急激に増加し,閑散期の宿泊客数が増えることにより,地域住民向けの店舗や廃業した旅館が観光客向けの店舗に置き換わり,路線価が上昇するなどツーリズムジェントリフィケーションの兆候が見られた.
研究ノート
  • 森川 洋
    2022 年 17 巻 p. 22-
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/02/13
    ジャーナル フリー
    東京一極集中の考察には地方からの人口流入だけでなく,都区部側の人口移動の考察が必要である.都区部の各区では,若年人口は地方大都市から大量の転入超過を示すが,壮年期以後において東京圏内大都市に流出する人と高齢期まで都区部内を移住しながら生活する人とがあり,地方大都市への帰還者や転出者は比較的少ない.東京圏内大都市に含まれる横浜市と川崎市はさいたま市や千葉市とは違って地方大都市から多くの若者を吸引しており,都区部との人口交流も活発であり,都区部に近い存在である.近年,都区部への流入者には男性よりも女性が多くなり,若年移動において流入した男性はその後の流出によって全体的には転出超過となるが,女性は都区部内にとどまる人が多く,都区部の人口増加を支えるのは女性であるといえる.今日,都区部の人口吸引力は著しく強化されているとはいえないが,2045年まで東京特別区の人口は増加し,比較的低い高齢化率を維持することが推計されるので,人口集中が自然に解消するとは考えられない.地方大都市からの流入者は,都区部から流出しても東京圏内に留まるし,東京圏生まれの人は地方には転出しない傾向があるので,東京圏と地方圏との人口増加率の差異は縮小しないであろう.国勢調査(2015年)の転出入状況には「移動状況不詳」(調査漏れ)が多いので,他の資料による検証も必要であろう.
  • 馬鞍山市からの通勤者に対するインタビュー調査から
    阿部 康久, 朱 姝尭
    2022 年 17 巻 p. 32-
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/02/13
    ジャーナル フリー
    本稿では,中国・南京大都市圏における馬鞍山市から南京市中心部への長距離通勤者を対象として,長距離通勤を選択した背景を,通勤者の職種や居住形態,通勤手段,通勤費用等の面から検討した.調査方法としては,主に南京市に通勤する馬鞍山市民17人を対象としたインタビュー調査を行い,上記の点を検討した.調査結果として,調査対象者らは大卒以上の学歴を持ち,ICT技術者等の比較的高収入な専門職として就業している人たちであり,職場での残業時間は比較的少ない勤務状況であった.また,対象者のほとんどが元々馬鞍山出身者か配偶者が馬鞍山出身者であり,本人か親世帯が保有する持ち家に居住していた.その一方で南京市では2000年代から続く住宅価格の高騰により,南京市内での住宅の確保が難しい状況にあった.通勤手段をみると,2016年に南京と馬鞍山を接続するようになった高速鉄道を利用している人が多い.高速鉄道は所用時間の短さに加えて料金も低く抑えられており,自家用車や高速バスといった他の通勤手段に比べて有利であるが,予約の取りにくさや乗車時間変更の難しさといった課題もみられる.逆に高速鉄道の開通により,高速バスの便数が減る等の事情により,他の通勤手段が脆弱化している側面もみられた.都心部に高学歴な専門職向けの雇用機会が集中すると同時に住宅価格が高騰している状況下で,長距離通勤に対する需要は高まっているとみられるが,現在の通勤インフラの状況では,南京大都市圏では,高速鉄道の停車駅があり通勤のための条件に優れた馬鞍山駅周辺を除くと,現時点では長距離通勤のための交通網の整備は十分には進んでいない可能性が指摘できる.
  • 福岡県糸島市を事例として
    岡 祐輔
    2022 年 17 巻 p. 42-
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/02/13
    ジャーナル フリー
    福岡県糸島市における都市近郊型観光地の形成要因を多様な観光資源の存在とそれらを生かすための行政及び民間の取り組み,さらには条件の近い他の自治体の戦略との相違点に着目しながら検討した.本稿ではまず,福岡市との近接性による観光客の増加に着目し,都市近郊型観光地における観光資源の活用状況,観光客の目的などからそれらの結びつき明らかにした.また観光における重要な役割を果たす「観光資源」「市場・顧客の関係」「アクターの関係」といった基本的な枠組に沿って,糸島市と同様に大都市近郊に位置し,規模などが類似し,観光地化が図られた地域を比較対象として,自治体や民間の動きといった地域の政策の違いから観光地化の要因を調査した.以上の考察の結果として,糸島市が観光地化に成功し,観光客が増加し,観光産業発展の兆しを見せている理由として,①民間が主導し,行政がそれを促進してきたこと,②多種多様な観光資源を活用できたこと,③隣接大都市の観光需要と地域の観光資源をマッチングできたこと,の3つが挙げられる.
  • 大都市・京都市と地方都市・岡山市の事例
    荒木 俊之
    2022 年 17 巻 p. 56-
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/02/13
    ジャーナル フリー
    本稿では,大都市・京都市,地方都市・岡山市を対象地域として,2000年代に示されたコンビニエンスストア(以下,コンビニ)の立地パターンにおける大都市と地方都市との相違点が,2010年代(2011~2020年)にも確認できるのか,それとも類似点があるのかを明らかにするために,定点観測的に,その立地パターンを分析した.その結果,両市とも2000年代にみられた立地地点の多様化という類似点が引き続き確認できた.京都市では,住宅系への出店割合の低下と商業業務系などへの出店割合の上昇,特殊立地への出店であり,岡山市では,住宅系への出店割合の低下と混在系などへの出店割合の上昇である.一方で,京都市における立地の求心化,岡山市における立地の郊外化のように,出店エリアに相違点が確認できた.
  • 小林 千紘
    2022 年 17 巻 p. 68-
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/02/13
    ジャーナル フリー
    本稿では,大阪市阿倍野区の買い物環境とフードデザートの状況について調査した.阿倍野区では高齢化が進んでおり,高齢者世帯人口の分布は地理的に偏っている.阿倍野区の高齢者世帯人口の分布とスーパーマーケットの分布を把握することにより,それらの指標をもとにフードデザートマップを作成した.高齢者世帯人口が多く,かつ,フードデザートの状況に置かれている地域は阿倍野区の南西部に存在している.また,阿倍野区の商店街は,店舗数の減少や商店街内のスーパーマーケットの閉店により,生鮮食料品を買い揃えられる商店が減少した.商店街の変化は,周辺の買い物環境に影響を及ぼし,フードデザート発生の一因となる.フードデザートについては,スーパーマーケットからの距離だけでなく,地形も関係する.高低差が大きい地形であれば,フードデザートの範囲に含まれずとも,フードデザートが発生する.
総説
  • 芳賀 博文
    2022 年 17 巻 p. 84-
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/02/13
    ジャーナル フリー
    本稿は,スカイスクレイパー(超高層)に関する既往研究を展望し,今後の研究の方向性について模索したものである.最初に,スカイスクレイパーの関連用語を,主にCTBUHの定義を用い実例を示しながら整理した.次に,スカイスクレイパーに関するこれまでの研究を,類似した研究テーマ(経済変動,経済効果,高さと経済性,高さ競争,高さ規制,地理学からのアプローチ)ごとにまとめて総括的に検討を行った.スカイスクレイパーを対象とした研究のうち,地理的視点を伴うものは僅かしかない.このため最後に,スカイスクレイパーに関する今後の地理学における研究の方向性と可能性について,以下の4つの論点を提示した.立地分布:都市システム研究を援用して,マクロとミクロレベルで立地分析を行うことが可能である.立地要因:垂直的な利用形態が,平面的な利用に較べ如何に有利かを実証的に示す必要がある.地域差:形状,総数,用途,分布状態,それらの動態変化等を調べることで,特徴的な地域差が見つかる可能性が高い.垂直的機能分化:主要用途であるオフィス,集合住宅,複合用途に関し実際の質的活動を調べることにより,高さによる利用傾向が見つかる可能性がある
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