都市地理学
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調査報告
「生活圏域」の特質と階層性 ―「二層の広域圏」におけるオフィス立地分析―
山﨑 朗藤本 典嗣
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2006 年 1 巻 p. 31-49

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抄録

国土審議会調査改革部会( 部会長:中村英夫・武蔵工業大学教授) は,2004 年5 月に公表した「国土の総合的点検」で2050 年の国土構造を描いた.そこでは,生活面における人口約30 万人規模の「生活圏域」と都道府県を超える新しい区割りの「地域ブロック」という二層の広域圏を設定させた.このうち,「生活圏域」は,医療・福祉・教育・消費活動の拠点となる人口10 万人以上の都市を中心としている.中心都市と周辺市町村との間では,通勤・通学・物流面で強い関係が認められ,生活面においてだけではなく,経済的にも一つの都市圏(人口はほぼ30 万人以上)とみなされている.全国で82 の「生活圏域」が抽出されたが,2000 年現在で,全市町村数の65.8%,全人口の90.9%,国土面積の54.6%を占めている.国土審議会の各委員会から提出された報告書では,主として生活サービス機能の観点から,この「生活圏域」を単位として,医療・福祉機関,教育機関,デパート等の集積状況について分析を行った.しかしながら,「生活圏域」における経済活動の特性や各「生活圏域」内における事業所,行政機関の立地については,まだ調査されていない. 2050 年においても,雇用者の大半は民間企業や行政機関の事業所において雇用されると考えられ,とくに,大企業の本社・支所(支社・支店・営業所)といったオフィス部門は,今後も地域における雇用の核となるだけにとどまらず,「生活圏域」の特質を規定し,さらには今後の「生活圏域」の発展を占う要素という性格を有している. 本稿では,国土審議会調査改革部会およびその小委員会,研究会において抽出された,「生活圏域」の発展を左右すると考えられる上場企業の本社・支所と行政機関の配置について分析を行った.82「生活圏域」は,それぞれ独立した医療・福祉・教育・消費サービス供給圏として抽出されているが,現実にはそれぞれの「生活圏域」は,上場企業および行政機関の立地によって階層的な都市システムのなかに位置づけられている.本稿の目的は,「生活圏域」による階層的都市システムの構造を解明することにもある.

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© 2006 日本都市地理学会
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