2017 年 12 巻 p. 33-49
本稿の目的は,ステューデンティフィケーションに関する研究をいくつかの分析視角に沿って検討し,研究の発展可能性を展望することにある.ステューデンティフィケーションとは,学生人口の増大と特定地区への集中によってもたらされる都市の社会的,経済的,文化的,空間的変容を意味する.都市空間の変容過程としてみた場合,ステューデンティフィケーションとジェントリフィケーションとの間には,類似性がある.2つの概念は,学生のライフコースによっても結び付けられている.すなわち,学生は未来のジェントリファイアー候補であり,ステューデンティフィケーションの進展とともに生成する「学生の空間」において,一人前の中間階級としてのハビトゥスを身に着けていくと仮定される.ステューデンティフィケーションは,ある種の学生の周縁化を伴うプロセスでもある.本稿では,イギリスにおける自宅生と,オセアニアにおける留学生を取り上げて,学生の周縁化について論じる.以上を踏まえ,ステューデンティフィケーション研究が今後の日本の都市地理学に与える示唆について考察して結びとする.