都市地理学
Online ISSN : 2434-5377
Print ISSN : 1880-9499
論説
大都市の創造性とアニメーションスタジオの役割
山本 健太
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2018 年 13 巻 p. 37-47

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抄録

本稿は,東京におけるアニメーション産業労働者のスタジオ内での活動と転職行動を事例に,大都市の文化創造性におけるアニメスタジオの役割について議論するものである.

アニメーション産業は日本の文化産業の一つとして,国内外に認知されているが,アニメーションを作り出す労働者の実態についてはあまり知られていない.当該産業は国内では東京に一極集中しており,労働者は東京という都市空間の中で技術を習得し,職をみつける.本稿では,この労働者の生産活動に注目する.労働者は担う仕事の違いによって大きく生産部門と制作部門に分けられる.生産部門労働者の生産活動は,主として所属するアニメスタジオ内に限定される.一方で,制作部門労働者の活動はアニメスタジオの内外に展開する.

アニメスタジオの内外には,彼らの活動を支える様々なインフラやアメニティが整えられている.労働者はこのインフラやアメニティを利用することで,昼夜の時間を問わず,生産活動に従事することができる.またアニメスタジオには,異なる専門技術を持つ労働者が同じ時間帯に働いており,突発的なミーティングなどもなされている.アニメスタジオ間は制作部門労働者が頻繁に往来しており,そこでも物流や情報流がみられる.

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© 2018 日本都市地理学会
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