都市地理学
Online ISSN : 2434-5377
Print ISSN : 1880-9499
論説
東京都心周辺部におけるジェントリフィケーションと都市景観の変化
下谷・根岸・東日暮里を事例に
藤塚 吉浩
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2022 年 17 巻 p. 1-

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抄録

本稿では,東京の都心周辺部である台東区下谷・根岸と隣接する荒川区東日暮里におけるジェントリフィケーションと都市景観の変化について検討し,次の三点を明らかにした.第一に,東京におけるジェントリフィケーションの変化について,管理,専門・技術職就業者数の増減を指標として検討し,2000年代後半は中央区や港区で管理,専門・技術職就業者数は増加したが,2010年代前半は都心から離れた墨田区や荒川区,豊島区などで増加したことを明らかにした.第二に,台東区下谷・根岸における都市景観の変化を検討し,金杉通り沿いに多かった町家と路地に面した長屋の多くが失われ,高層共同住宅が増加したことから,歴史的な町並みを守ることは容易ではなく,下町の風情をいかに保つかが重要と指摘した.第三に,荒川区東日暮里における高層共同住宅建設に伴う建築紛争について考察し,荒川ルール条例による地域関係者会議における協議によって,近隣への影響が緩和されたことを示した.今後ジェントリフィケーションが拡大すると,周辺の地域に立地する産業の操業環境との調和をどのように実現できるか検討が必要となる.

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