2009 年 4 巻 p. 62-70
ピータンプル工業成長センターは,経済的後進地域の開発プロジェクトとして計画され,インド有数の巨大規模の工業団地である.しかし,この開発は大都市圏から隔絶された立地のために,工業労働者の住宅を確保することが急務であった.本研究は工業団地開発に伴い創出された住宅地(ハウジング・コロニー)における世帯構成や就業,生活様式に関して1996 年から2007 年までの変化を戸別訪問による聞き取り調査によって明らかにしたものである. 調査の結果,借家世帯の大部分は転出して居住者が入れ替わっていたが,持ち家世帯の多くは継続して居住しており,住宅取得によって出身地への帰還行動は減少して定着化した.また,高額消費財の所有についてみると,カラーテレビや電気冷蔵庫の所有が大幅に増え,自動車保有者も急増した.これらのことから,インドでは経済後進地域においても経済発展の影響によって人々の生活水準が向上したといえる.