都市地理学
Online ISSN : 2434-5377
Print ISSN : 1880-9499
論説
ウランバートルの生活環境の変容
-都市化にみる市場化経済の光と影-
大島 規江
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2011 年 6 巻 p. 35-46

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抄録

本研究は,都市に居住するという文化を持たなかった人々が,政治・経済システムの転換によって都市居住を志向することで加速度的に進んだ都市化,それに伴う生活環境の変容を正のインパクトと負のインパクトという双方に焦点を当てて考察した.市場経済移行に伴って,ウランバートルでは都市人口が膨張したにもかかわらず,その急速な人口増加に対応しきれず,人々の生活に直結する住環境の整備すら遅々として進んでいない.市場化経済の恩恵を受けた人々はごく一部であり,所得分配等の社会制度が未発達なモンゴルにおいては経済的格差がひらく一方である.そうした状況は,市域全体における貧困層の増加という形で現れている.幸運なことは,貧困層の増加が犯罪率の大幅な上昇にはつながっていないことである.しかしながら,経済格差の拡大は社会の不安定要素となりかねず,市は人々の生活に直結する生活環境の整備に早急に取り組む必要性がある.

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© 2011 日本都市地理学会
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