都市地理学
Online ISSN : 2434-5377
Print ISSN : 1880-9499
論説
茨城県日立市における地域コミュニティと 住民による東日本大震災後の防災対策
久保 倫子益田 理広山本 敏貴卯田 卓矢石坂 愛神 文也細谷 美紀松井 圭介
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2013 年 9 巻 p. 56-68

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抄録

本研究は,東日本大震災(2011 年3 月11 日)による被災周辺地域において,地域社会や住民がどのように復旧・復興の過程を歩むのかを検証するため,茨城県日立市における震災直後の被災状況や避難所運営,さらに震災から1 年後の地域コミュニティや住民による防災意識の高まりを,Kates and Pijawka(1977) による災害からの復旧・復興過程のモデルに基づいて分析した.震災直後の非常時には,避難所の実質的な初期運営に地域コミュニティが中心的な役割を果たした.また,この時期の住民行動をみると,震災当日に帰宅できたものが多いものの,その後の行動には職業による差異がみられた.住民による震災後の状況に対する評価では,公的主体による支援に対する不満が大きく,これは給水や情報伝達システムの不備,避難所等の環境の悪さが,公的主体の不十分な対応に起因するものと判断されたためである.ライフラインの復旧が進む頃には,非常時の経験を住民間で共有するなどの動きがみられた.次に,復旧~復興期には,前段階の反省から各地区で独自の防災対策がとられるようになった.地域の自主防災組織による避難訓練の実施や,コミュニティ推進会による地区内の井戸調査の実施がなされたりする中で,各地区から市への要望が寄せられるようになり,地域と市の対話が進んだ.日立市のように被災周辺地域では,被災の程度が相対的に小さいことから,復興までの期間は被災核心地と比較して短い.一方で,こうした地域では都市開発を伴う大規模な復興事業が行われにくいため,地域コミュニティや住民,市や関係各所の対話に基づく地域の復旧・復興が進められていることが明らかとなった.

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© 2013 日本都市地理学会
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