2020 年 78 巻 3-4 号 p. 87-104
マルスダレガイ科のSaxidomusウチムラサキガイ属に知られてきた殻頂下洞をEzocallistaエゾワスレガイ属にも確認した。この発見は両属がCallistaマツヤマワスレガイ属よりも近縁であることを支持している。現生のSaxidomus purpurataウチムラサキは日本周辺では温帯水域に生息しているが,北海道礼文島,厚岸湾,中国の渤海,ロシアのポシェット湾,アムール湾,ピーター大帝湾などの冷水域にも生息している。本種の冷温帯水域からの最古の記録は宮城県仙台市の最上部中新統~最下部鮮新統竜の口層からの化石である。このことは,ウチムラサキは中新世末期~鮮新世初期に冷水域に適応進化したことを示唆している。