貝類学雑誌
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丹沢山地の新第三紀層からニッポンオトヒメゴコロガイの化石産出とその意義
冨田 進
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1989 年 48 巻 3 号 p. 167-173

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抄録

神奈川県丹沢山地東部の愛甲郡清川村落合からニッポンオトヒメゴコロガイHalicardia nipponensis Okutaniの化石を発見した。産出地点の落合を流れる早戸川の川床には, 新第三系丹沢層群落合礫岩層が露出し, 貝化石を散在的に産出する。これらには鮮新世の掛川動物群の構成種や名洗層との共通種が含まれ, 暖流系貝類が多くを占めている。上部浅海性貝類と漸深海性貝類が混在して産出したが, 貝殻の保存状態を見ると, 上部浅海帯に生息する種では不良である。これらの種は礫と共に, 水深400∿600mの漸深海性種が生息する場所へ運ばれて堆積したと考えられる。本報告のニッポンオトヒメゴコロガイは合弁で産出したが, 現在この種は三陸沖から相模湾にかけての水深400∿1500mの砂泥底に生息するので, この考えを支持する資料として重要と思われる。

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© 1989 日本貝類学会
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