敬心・研究ジャーナル
Online ISSN : 2434-1223
Print ISSN : 2432-6240
人工骨頭置換術を施行した患者における運動及び呼吸機能と血液・生化学所見の関係性
内田 学山田 真嗣岡野 祥悟宮澤 龍聖山﨑 優斗宮地 司山口 育子
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2017 年 1 巻 2 号 p. 37-42

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抄録

大腿骨頸部骨折を呈し人工骨頭置換術を施行した患者は、歩行時に呼吸困難感を訴えるが、加齢による体力の低下と捉えられることが多い。手術侵襲が加わることにより、出血や炎症によるタンパク異化作用の亢進によって、タンパク質由来である赤血球(Red blood cell:以下RBC と略す)やヘモグロビン(Hemoglobin:以下Hb と略す)が減少するため、酸素運搬能が低下していることも考えられる。本研究では、栄養状態を表す総タンパク(Total Protein:以下TP と略す)の値を基準として、TP の値が正常値(6.7mg/dl)以上(以下、高栄養群)と正常値未満(以下、低栄養群)の2群に分類し、運動機能、個人特性、呼吸機能、血液・生化学検査、栄養状態を検査測定し、栄養状態と血液生化学所見の関係性について調査し、これらが運動機能に及ぼす影響について検討した。統計学的解析は対応のないt-検定を行った。結果として二群間で有意差が得られたものは、C 反応性タンパク(C-reactive protein:以下CRP と略す)、総タンパク(Total Protein:以下TP と略す)、アルブミン(Albumen:以下Alb と略す)、RBC、Hb、6分間歩行テスト(6 minutes walking distance test:以下6MD と略す)、SpO2、Borg スケールであり、手術侵襲の影響を背景としたタンパク異化作用の亢進により、低栄養を示すと同時に酸素運搬能が低下し連続歩行距離の低下や呼吸困難感が増悪するという結果が得られた。人工骨頭置換術術後の評価項目として、血液生化学所見から栄養状態や炎症、酸素運搬能を把握する必要があるものと推察された。

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© 2017 学校法人敬心学園 職業教育研究開発センター
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