和温療法学会誌
Online ISSN : 2760-3393
コロナ禍での開業と和温療法1年目の現実
竹田 修司
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2024 年 2 巻 p. 30-32

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Abstract

当院はコロナウイルスが蔓延し、パンデミックとなっていた2021年8月に開業した。高知県では唯一外来和温療法を行っており、地域の方に和温療法がまだ周知されていない中で数少ない症例ではあるが報告する。

症例の概要:症例1.90代女性、うっ血性心不全、アルツハイマー型認知症、脳梗塞後遺症、非弁膜症性心房細動の疾患あり。退院後1か月経過し浮腫の再発、胸痛あり受診。薬の調整を行いながら和温療法を実施。

症例2.50代女性、冷え症、慢性腰痛症、肩関節周囲炎。常に身体がガチガチで固まっている、浮腫みやすい。肩こりや両下肢、腰部の痛みが強く夜間起きることがあり、寝不足になることもある。以上の主訴にて受診され、1週間後に控える卒業式までに体調を整えたいと自費で和温療法と物理療法を実施。

経過:症例1.通常の65℃では暑くて入れないとのことで、設定温度は45~50度で10分間入り、20分保温。頻回に通院するのが難しく月1回程度の間隔で実施した。3回目実施時には胸痛は消失したと発言あり。

症例2.卒業式までに計4回実施。初回から気持ちよさを実感しながら実施することができた。

考察及び結論:症例1.6回目に自覚症状の消失、暑いのが苦手ということもあり終了したが、8か月後に症状が再燃。和温療法を再開したが症状は変わらず、食欲不振・衰弱し他院に入院となった。

症例2.体調が改善し気持ちよく卒業式に参加できた。その後も数回実施し痛みの改善、睡眠不足の解消という結果が得られた。

心臓リハビリで和温療法を行うのは運動が困難な80~90代の超高齢者が良い適応だが、暑さに苦手な患者が多い。また認知症によりじっと座っていることが出来ないなど課題が多く、長期間継続するのが難しい。一方自費で実施している患者は症状が改善するのが実感できるため継続出来る患者が多い。当院の課題としては病院自体の認知度を高めていくこと、心臓リハビリの和温療法の対象患者を増やしていくこと、よりたくさんの方に和温療法を体験していただき和温療法を広めていきたい。

Ⅰ. はじめに

第1回和温療法学会学術集会の開催を心よりお祝い申し上げます。何の実績もなく開業間もない当クリニックに発表の機会を与えてくださいました鄭先生に深く感謝しております。学術的な貢献はできませんが、四国西部へき地での現状をお伝えできればと思います。

Ⅱ. 当院の紹介

当院は高知県の西にあります日本有数の最後の清流、四万十川の下流に位置する四万十市(旧中村市)にあります。

コロナパンデミックのさなか周りの反対を振り切って、2021年8月に開業致しました。循環器内科、内科を中心としていますが、心と身体を温める和温療法、振動病中心の物理療法、心臓リハビリテーション、睡眠時無呼吸症候群外来、訪問診療も行っております。

私の和温療法との出会いは、2010年7月の日本心臓リハビリテーション学会での体験コーナーです。和温療法の紹介スペースがあり、この和温療法なら心身に負担をかけず、心臓病のリスクを軽減することができると実際に体験してみて実感し、開業して取り入れることを決めました。開業前には和温療法の体験会も企画したかったのですが、コロナパンデミックのため断念致しました。

Ⅲ. 当院での和温療法の実際

心臓リハビリテーションは80代前半までは CPX評価をし、エルゴを中心に行っております。コロナ時代ということもあり、集団ではなく個別でのリハビリを行っております。運動が苦手、出来ない方やエルゴメーターが立て込んでいる場合には、和温療法をおすすめしていますが、それほど簡単ではないというのがリアルです。

また心臓リハビリテーションの目的だけではな く、自費での和温療法を行っております(図)。和温療法と物理療法を選んでもらい実施していますが、気持ちが良いという方が多く大変好評です。開業から1年の実績としましては、延べ人数32人、心リハが61件、自費が78件の計139件でした。疾患は心不全、高血圧、冷え性、肩こりが多く、 10~90代まで幅広い年齢層で治療を行っており、特に40~50代の方が多かったです。90代の方は5名行いましたが、暑さに耐えられず5~10分で終了することが多かったです。当院では86~90代の方は50度以下で治療しております。

図1

自費での和温療法メニュー紹介

Ⅳ. 心臓リハビリテーションでの和温療法の症例

90代後半女性、疾患はうっ血性心不全、アルツハイマー型認知症、脳梗塞後遺症、非弁膜症性心房細動。当院初回受診時 NYHA 分類Ⅱ度、 BNP369pg/ml、クレアチニン0.95㎎ /dl、ヘモグロビン濃度10.2g/dl、アルブミン3.3g/dl、尿素窒素 29.1㎎ /dl。前医からメマンチン OD 錠5㎎2錠、ニセルゴリン錠5㎎1錠、アゾセミド錠30㎎1錠、スピロノラクトン錠25㎎1錠が処方されており、退院して1か月が経過し浮腫が再発、胸痛があり来院されました。

初回の和温療法では15分入る予定でしたが暑さに耐えられず10分で終了しました。保温中は眠っておられました。3回目から胸痛が消失し、6回目には胸痛が出現することもなくなったとの発言が聞かれ、暑いのが苦手なことと症状が治まったこともあり一旦終了となりました。

終了してから8か月後、両下肢の浮腫が増強し和温療法を再開しました。この時の BNP は432.7pg/ml でした。1~2週間に1回の頻度で和温療法を行っていましたが症状は変わらず、介護申請し施設入所を待っていましたが、食欲不振、衰弱し他院に入院となりました。

Ⅴ. 自費での和温療法の症例

50代前半女性、疾患は冷え性、慢性腰痛症、肩関節周囲炎。症状は、常に身体が固まっているような感じがある、浮腫みやすい、肩こりや両下肢、腰部の疼痛が強く覚醒することがある、月経時に量が多くしんどい、犬の散歩の際は身体が重くやる気が起きないとのことでした。娘さんの卒業式までに体調を良くしておきたいとのことで、卒業式まで計4回毎日和温療法と物理療法を実施しました。

初回から気持ちよさを体験して頂き、2回目からは普段できない昼寝ができた、家事もスムーズに行うことができたと話されました。3回目には和温療法を行ってから夜間下肢が痛いのが改善してきて調子が良い、肩こりもほとんど感じないとの感想を頂きました。4日連続で和温療法と物理療法を実施し、体調がよくなり気持ちよく卒業式に参加することが出来たそうです。和温療法を気に入って頂きその後も実施していく中で、痛みによって夜間覚醒することがなくなった、しんどかった月経時は体調がよくなった、犬の散歩をするときに身体が軽くなったとのことで症状の改善が見られ、和温療法の効果を実感頂けました。

Ⅵ. 今後の課題

心臓リハビリで和温療法を行うのは運動が困難な80~90代の超高齢者が多く、週1回以上来院できる方がほとんどいないため、実際には月1回程度の実施となっております。また暑さに苦手な方や認知症によりじっとすることが出来ない等の理由で長期間継続して行うことが出来ておりません。一方自費での和温療法は、自らやってみたいと希望されるケースが多く、冷え性や疼痛などの症状が改善したと自覚されることが多いため、継続して治療を受けることが出来ております。

当院は開院して間もないこともありクリニック自体の認知度が低く、また四国内で初めて外来和温療法を取り入れたこともあり、和温療法のことを知らない方が多い印象です。心リハでの対象患者を拡大、継続出来るようにしていくことや、もっともっとたくさんの方に和温療法を体験して頂き効果を実感してもらい、和温療法を四国地方全体に広めていきたいと考えております。

 
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