長野県波田町にある有機水稲栽培歴30年以上の水田で,2003∼05年に耕耘方法の違いが水稲および雑草の生育に与える影響を検討した。稲ワラをすき込む秋耕起の有・無,有機施肥後の春耕の時期(入水0・40日前)および春耕の深度(5・15cm)の3要因について,秋耕起を一次因子とする分割区法で実験した結果,秋耕起有り・入水40日前の春耕処理で雑草重量が低下し,オモダカ(Sagittaria trifolia L.),イヌホタルイ(Scirpus hotarui Roxb. var. ohwianus T. Koyama Ohwi)およびキカシグサ(Rotala indica(Willd.)Koehne)などの小型広葉雑草が抑制傾向にあった。秋耕起で作土中の移植直後の可給態窒素含量(Av-N)が減少し,無除草条件では水稲収量が増加して,雑草の根量とクログワイ(Eleocharis kuroguwai Ohwi)の新規塊茎重量が低下した。また,入水40日前の春耕および入水前の深耕もクログワイの新規塊茎重量を減少させた。入水直前の有機施肥ではAv-Nが増大するとともに雑草と水稲の生育量がともに増加した。乾田条件の秋耕起と入水直前の有機施肥浅耕の組み合わせで,養分供給と根系発達に影響を与え,初期除草との体系で有機水田の雑草害と繁殖を抑制する可能性が認められた。