雑草研究
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原著論文
稲発酵粗飼料のサイレージ発酵が主要水田雑草種子の死滅に及ぼす影響
小荒井 晃服部 育男鈴木 知之住吉 正大段 秀記佐藤 健次加藤 直樹保田 謙太郎
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2015 年 60 巻 3 号 p. 93-100

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抄録

発酵粗飼料として利用する水稲栽培の普及が進められているが,水田雑草の種子が混入した稲発酵粗飼料が生産された場合,それを採食した牛のふん中に生存した雑草種子が混入し,その牛ふんで堆肥を作成・水田に散布することによって雑草種子の分布が拡大する危険性が懸念される。そこで,稲発酵粗飼料中のサイレージ発酵が主要な水田雑草種子の生存に及ぼす影響を明らかにするため,ヒメタイヌビエ,アメリカセンダングサ,タカサブロウ,イヌホタルイ,タマガヤツリ,コナギおよびクサネム種子を供試草種として,稲発酵粗飼料中の種子の生存状況にについて調査した。その結果,ヒメタイヌビエ,アメリカセンダングサ,タカサブロウ,イヌホタルイ,タマガヤツリおよびコナギの種子は,約90~180日のサイレージ発酵によってほとんど死滅するのに対し,種皮が硬実の状態にあるクサネム種子は,サイレージ発酵によってほとんど死滅しなかった。したがって,硬実のクサネム種子が稲発酵粗飼料に混入した場合,牛ふん堆肥を通じて種子が拡散する可能性が極めて高いことが示唆された。

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© 2015 日本雑草学会
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