雑草研究
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新 diphenylether 系除草剤HE-314に関する研究
第2報 各種水管理条件と殺草力との関係
早坂 利将
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1967 年 1967 巻 6 号 p. 58-63

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抄録

以上の実験結果から得られた概要は下記の通りである。
(1) HE-314乳剤を無漏水条件下湛水処理で使用した場合, 処理後2~5日目まで, 活性成分は相当量湛水中に分散残存しており, この期間中土壌表層には少量しか存在しない。その後, 土壌表層での含量は徐々に増加し, 処理8日目前後に最大となり, 以後減少するが, 40日後でも相当量残存し, その残効期間は長いものと考えられる。
(2) 本剤を湛水処理に使用した場合, 処理初期に湛水中に分散している活性成分は湛水茎葉殺草効果を発現し, その後徐々に土壌表層に沈着することにより雑草発生防止の土壌処理効果を表わすものと考えられる。したがつてHE-314の湛水処理を行なつた場合, 処理後7日間の水管理が極めて重要なことが明らかになつた。
(3) 本剤の雑草茎葉処理方法を変えた場合, 湛水滴下処理>>落水噴霧処理>>落水土面処理 の順に殺草力が大となつた。また, 落水噴霧処理および落水土面処理を行なつた場合は, 処理後短時間中に湛水することにより殺草力を高めることができる。
(4) 湛水処理で処理後3日以内の落水操作は, 湛水中に分散している成分を流失し, 湛水茎葉作用時間を短くするため, 効果, 特に湛水茎葉処理効果を減退させるが, 4~5日以後の落水操作は無落水と同様で, ほとんど影響がない。
(5) HE-314の湛水雑草処理において, タイヌビエのように草丈の高い雑草に対しては水深が深くなるほど殺草効果が増大し, 広葉雑草のように草丈の低い雑草にはむしろ浅水条件下の方が殺草力が大である。すなわち雑草体ができるだけ没する程度湛水し, かつ, なるべく湛水中におけるHE-314の活性成分濃度を高めることが重要と考えられる。
(6) 減水深程度にかかわりなく処理時の湛水深がその圃場の1日当りの減水深量を上まわり, かつ地上水を切らさないように毎日深水管理を行なえば, 減水そのものはあまり殺草効果には影響を与えないようである。しかし, 減水深大きく, 地上水がなくなり, 土面が露出する条件あるいは水管理においては, 殺草効果が大きく減退する。
(7) HE-314の湛水雑草処理効果において, 湛水茎葉作用面積, 作用時間, 湛水中における活性成分濃度および湛水の維持が極めて重要な要因であると考えられる。
(8) 移植水稲に対しては, 湛水深程度にかかわりなく安全であつた。

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