雑草研究
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含シメトリン除草剤のイネへの影響の温度による変動とその土壌による差異
荒川 一光野田 健児
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1973 年 1973 巻 15 号 p. 48-55

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抄録

含シメトリン除草剤を用いて, イネに対する薬害の温度による変動, ならびにその土壌の種類による差異について検討した。その結果の要旨は次のとおりである。
1) 含シメトリン除草剤は, 濃度が同じであれば, いずれもイネへの薬害は高温により促進され, 本実験の範囲では混合相手による差が本質的にあるとは考えられない。しかし, X52・Sは有意的ではないが, 若干他剤より少ない傾向がみられた。
2) 含シメトリン除草剤のイネに対する温度反応性は土壌により異なり, 川砂>沖積埴壌土・赤黄色土 (B) の関係にある。
3) シメトリンによるイネへの薬害の温度による変動は土壌により異なる。その程度は, 石英砂>川砂>シラス土 (砂壌土)>羽犬塚河成沖積土 (埴壌土)>赤黄色土 (B)≒火山灰土 (いずれも軽埴土)>海成沖積土 (重埴土)>赤黄色土 (A) (重埴土) の順序である。
4) 高温下におけるシメトリンの水稲に対する薬害は, 土壌の粘土含量との間にr=-0.855の逆相関がみられ, 薬害の発生程度に最も関係する土壌の性質としては粘土含量であり, したがって, このことは粘土含量がシメトリンの温度反応性の程度を支配する大きな要因になると考えられる。
5) なお, シメトリンのイネに対する作用性は, 重埴土間でも差異があり, 赤黄色土 (A) には少量でも薬害軽減効果がみられた。また, モンモリロナイトを粘土鉱物とする赤黄色土 (A) や海成沖積土では高温下でのイネの薬害は少なく, カオリナイトを粘土鉱物とする赤黄色土 (B) では大きいことから, 粘土鉱物の種類間で温度反応性に差のあることが考えられた。

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