抄録
カブトエビの自然発生数と水田雑草の除草効果との関係を究明するため, 1m2のコンクリート枠で, 前年に自然発生した土壌を添加して試験を行い, 次の結果を得た。
1) 発生雑草はキカシグサ, ミゾハコベなどの広葉雑草が主体で, そのほかノビエ, カヤツリグサ科雑草などが混生し, 合計発生本数4,000本/m2以上の, きわめて雑草発生量の多い条件であった。
2) カブトエビは雑草の出芽時期 (代掻き4~8日後) とほぼ同一時期に発生した。アジアカブトエビとアメリカカブトエビの二種が発生したが, アジアカブトエビが主体であった。
3) 代掻き後16日におけるカブトエビ発生数は, 5~266匹/m2であった。カブトエビを背甲長によって分級し, 中個体 (背甲長10~13mm) に換算して換算個体数を求めた。代掻き後16日におけるカブトエビの換算個体数 (x) と残存雑草本数対無放飼区比率 (y%) との間にはr=-0.793という, かなり高い負の相関が認められた。草種別にみると, カヤツリグサ科雑草, キカシグサなどとの間で相関が高かったのに対し, ノビエ, コナギでは相関が小さく, 効果に変動がみられた。
4) 前述したxとyとの間には, y=1/1.046×1.0518xの回帰式が適合した。この回帰曲線から推定して, 雑草発生本数を無放飼区の10%以下の発生数 (実用的除草効果) に抑制するには, 代掻き後約2週間の時点でm2当たり50匹程度 (背甲長1cm程度の個体) のカブトエビの発生が必要と結論された。