1) ハマスゲによるアレロパシー原因物質を検討するため, 塊茎のメタノール抽出物を分画して, F.1: 精油成分, F.2: 中性画分, F.3: フェノール成分画分, F.4: 酸性画分, F.5: 酢酸エチル可溶性画分, F.6: フラバノール型タンニン画分の6画分を得た。なお, F.5とF.6は塩酸-ブタノール反応が強陽性であるところから, ロイコアントシアンが主成分であると考えた。
2) これら6画分のうち, F.1とF.6はレタス, ホワイトクローバに対する種子発芽ならびに幼苗の胚軸伸長を阻害した。また, この画分は, メヒシバ, エゾノギシギシ, レタスおよびホワイトクローバの生長に対して400ppm~600ppmで抑制活性を示したが, エゾノギシギシは感受性で, 100ppmで抑制を示した。さらに両画分は, ハマスゲの生長を抑制し, 塊茎形成を阻害した。
3) 精油成分のハマスゲ生体内での分布は塊茎, 地下茎, 根部に比較して地上部茎葉組織では低かった。また, 生育に伴って親塊茎の精油含量は徐々に減少するが, 形成途中の塊茎は成熟化とともに漸増傾向を示した。また根部では発芽後45日程度までは著しい増大を示すが, それ以後は減少傾向にあった。
4) ハマスゲ生育土壌の水蒸気蒸留物中にはハマスゲ精油組成の cyperene,β-selinene,β-elemene, caryophyllene,α-humulene, cyperene およびα-cyperone の7成分のセスキテルペンが検出された。また, これらの成分のうち含酸素テルペンである cyperenone とα-cyperone は, 栽植150日の土壌中においても一定した傾向で検出されることを認めた。