雑草研究
Online ISSN : 1882-4757
Print ISSN : 0372-798X
ISSN-L : 0372-798X
敷草雑草からの溶脱成分の生物活性
伊藤 操子松下 美郎梅木 陽一郎植木 邦和
著者情報
ジャーナル フリー

1981 年 26 巻 3 号 p. 221-227

詳細
抄録

1) 敷草, 敷わらがその分解過程での土壌への溶脱成分を通じて果樹に及ぼす影響を知るために, 基礎的な実験を行った。
2) 細断したメヒシバ, ヨモギ, イヌタデ, ギシギシ, ハマスゲ, シロツメクサ及びイタリアンライグラスの茎葉風乾物を混和した土壌で2か月間モモ実生を栽培した。その結果モモの生長は, 混和により総じて地上部で促進され, 根部でやや抑制される傾向を示したが, 地上部-地下部の生長のバランスは混和した植物の種により異った。とくにイヌタデの地上部生長促進効果は小さかった。
3) メヒシバ, ヨモギ, イヌタデ, ギシギシ, シロツメクサ, オアビユの茎葉風乾物及び稲わらの粉末の水抽出液の生物活性を, 種々の濃度についてレタスを用いて検定した。その結果, レタスの草丈, 根長は濃度によって著しく変化したが, イヌタデ以外の雑草の抽出物は, 概して草丈には促進的, 根長には抑制的に働いた。イヌタデでは全く異った傾向を示し, 高濃度では草丈, 根長ともに抑制された。一方, 稲わらでは草丈, 根長ともに促進された。
4) 土壌中での分解に伴う活性の変化をみるために, 同様の粉末を土壌に混和し, 80日間にわたり定期的に回収, 抽出して, レタスを用いて検定した。草丈, 根長にみられる活性の経時的変化のパターンは, すべての雑草及び稲わらについて類似していた。しかしながら, 雑草混和土壌では, 概して草丈に促進的, 根長に抑制的傾向がみられたのに対し, 稲わら区では逆の傾向を示した。
5) 以上の実験にみられるモモ及びレタスの生長反応における溶脱無機Nの関与について, 土壌及び抽出液の分析結果より検討したところ, Nとの関連性がみとめられる部分と別の要因が推定される部分があった。

著者関連情報
© 日本雑草学会
前の記事 次の記事
feedback
Top