雑草研究
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ホテイアオイの生態学的研究
第3報 開花, 受粉, 結実に関する調査
冨久 保男
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1986 年 31 巻 1 号 p. 24-29

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抄録
ホテイアオイの種子繁殖の実態を明かにするために, まず結実不良の原因を明かにすることを目的として, 開花, 受粉, 受精等について若干の調査を行った。結果の概要は次のとおりである。
1. ホテイアオイの自然受粉下における結さく率は5%内外と低かったが, 人工受粉を行えばよく結実した。
2. 結実の劣る原因の一つとして, 大気の乾燥により花粉の発芽し難いことが指摘されていた。しかし本研究の人工受粉の結果から, 少なくともわが国では, 大気湿度が結実に大きな影響を及ぼしているとは考えられなかった。
3. 結実の劣る原因は受粉し難いためであった。まず, 自花受粉をし難い理由としては, 開花前に雌ずいと雄ずがい接触する時期があるが, この時期には開葯せず, また各花の開花期間内には花粉は飛散し難く, 花粉が落下した場合は柱頭上に落ちず花弁上に付着すること, さらに雌ずいの受精能力は10時間以内であることなどがあげられる。
また虫媒による受粉が行われ難い理由としては, 訪花昆虫が少なく, また葯と柱頭の位置が離れているために虫媒が行われ難いことが考えられていたが, 本観察結果では訪花昆虫は見当らず, 1柱頭当り100粒以上の花粉が付着している率は5%以下と低かったことから虫媒も行われ難いと推察された。
4. 花粉は, 夏には稔性が高く, 20~40℃でよく発芽するので, 花粉稔性が低結さく率に影響を及ぼしているとは考えられなかった。
5. ホテイアオイの受粉は, ホテイアオイ植物体に集まる訪花昆虫以外の昆虫, 蛙などの動物の移動や強風などに伴う花柄の大きな揺れによる機械的で機会的な原因によって行われるものと考えられた。
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© 日本雑草学会
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