雑草研究
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数種α-クロロアセトアニリド系除草剤の移植水稲薬害に及ぼす湛水深の影響
小笠 原勝石川 公広近内 誠登
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1990 年 35 巻 2 号 p. 102-108

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抄録

ブタクロール, プレチラクロールおよびNSK-850の移植水稲に対する薬害と湛水深との関連性を検討した。その結果, 湛水深を1, 4および8cmとして無漏水条件下の宇都宮水田土壌に除草剤を処理した場合, 移植水稲に対する薬害は湛水深の増加に伴い低下することが判明した (Fig. 1)。また薬害試験と同様の条件下で移植水稲の生育を経時的に調査した結果, 湛水深の深いほど水稲の草丈は高く乾物比は低くなり, 苗質は低下することが明らかとなった (Fig. 2)。即ち, 移植水稲の苗質の違いからは,これらの除草剤の水稲薬害と湛水深との関係を説明できないことが分かった。移植水稲におけるブタクロール, プレチラクロールおよびNSK-850の吸収部位は, 茎部からも僅かに吸収されるが, 主として根部であることが判明した (Fig. 3)。また, 各除草剤の水中および土中濃度 (水抽出) は, 1cmから8cmの湛水深の範囲内では湛水深の浅いほど高いことが明らかになった (Fig. 4, 5, 6)。以上の結果から, 深水条件と比較すると浅水条件では水稲の薬剤吸収部位である根部および茎部の位置する水中および土中における除草剤の濃度が高くなり, 水稲薬害が強く発現したものと考えられる。
この様に, 湛水深はNSK-850, ブタクロールおよびプレチラクロールの水稲薬害に影響を及ぼす重要な耕種的要因の一つであり, これらのα-クロロアセトアニリド系水田除草剤を実際場面で用いる場合には, 水稲の生育や除草効果の安定化のためだけでなく, 薬害回避のためにも, 湛水深の適正な管理が望まれる。

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