雑草研究
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新しい光合成反応阻害剤, α-アゾヒドロペルオキシド (AHPO)
関 理恵手塚 敬裕山下 魏
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1993 年 38 巻 3 号 p. 159-166

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抄録

α-アゾヒドロペルオキシド (AHPO) は, ベンズアルデヒド-フェニルヒドラゾンのヒドロペルオキシド誘導体で (第1図), その化学反応性は中核の炭素原子に付いたアゾ基 (-N=N-φ) とヒドロペルオキシ基 (-OOH) により生じるが, -OOH基を-OH基に変えても光合成阻害作用が見られた。(第2図B, -Δ-: AHOL)
10μMのAHPOは, 光化学系Iと光化学系IIに依存した電子伝達反応 (光合成明反応によるH2Oからフェリシアン化カリウムやNADP+やメチルビオローゲン (O)2への電子の流れ) を阻害した (第2, 3図)。しかし, 光化学系II粒子の酸素発生反応 (第2図A, H2O→PBQ) や, p-フェニレンジアミンで触媒される光化学系IIに特異的な葉緑体の酸素発生反応 (第3図A) は阻害されにくいので, AHPO阻害部位はプラストキノンの酸化側であると推定された。一方, メーラー型光合成酸素消費反応 (第4図, DCPIPH2→MV (O2)) や, チトクロム-f光酸化反応 (第5図), 循環的光リン酸化反応など光化学系Iに特異的な反応も, AHPOで阻害されなかった。この結果, AHPOはプラストキノンまたはチトクロム-b6/f複合体を阻害すると推定された。これはジブロモチモキノン (DBMIB) やトリフルラリンやダイアレート, また1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルポジイミド (EDAC) も阻害する部位であるが, AHPOとこれら阻害剤の構造は異なっている。また, DBMIB阻害はジチオスレイトールの添加で除去されるが, AHPO阻害は除去できず, DBMIBと阻害機構が異なることが推定された。
以上の結果から, AHPOは, 新しい型の阻害剤として, チトクロム-b6/f複合体の電子伝達機構の解明や, 新規除草剤の開発に利用できる可能性を持つことが示唆された。

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