抄録
竜ケ崎および谷和原水田土壌を供試し, 土壌に施用したテニルクロール [2-chloro-N-(3-methoxy-2-thienyl) methyl-2′, 6′-dimethylacetanilide] の土壌における下方移動性とヒメタイヌビエ (Echinochloa crus-galli Beauv. var. formosensis Ohwi) に対する殺草活性との関連について検討した。
本剤の土壌における移動性については, 土壌を層別に分けた後, 直ちにその土壌 (新鮮土壌) の容量を測定し, 他方, 二層遠心管を用いて, 遠心分離によって植物有効土壌水 (土壌水) と残さ土壌 (遠心分離土壌) とに分けて測定した。これらの結果は, 本剤の移動性が谷和原土壌に比べ竜ケ崎土壌で高いことを示した。新鮮土壌および遠心分離土壌における本剤の存在量は, 0-1cmの土壌層では谷和原土壌が高かったが, 1-5cmまでの土壌層では竜ケ崎土壌が高かった。一方, 各土壌層における新鮮土壌中の本剤の存在量と土壌水中の本剤の存在量とから求めた脱着率は, 各土壌ごとにほぼ一定であり, また土壌水中濃度はいずれの土壌層においても竜ケ崎土壌で高かった (Table 2)。新鮮土壌におけるヒメタイヌビエの生育は, 谷和原土壌では, 0-2cmの土壌層では強い抑制が認められたが, 2cm以下の土壌層では抑制は認められなかった。一方, 竜ケ崎土壌では, 0-4cmの土壌層で強く抑制され, 4-5cmの土壌層ではわずかな抑制が認められた (Table 2)。
吸着等温線より土壌吸着量を求めたところ, 吸着係数は, 竜ケ崎土壌に比べて谷和原土壌がかなり高かったが, 吸着定数は両土壌間の差異が小さく, 本剤の吸着は主として有機物に依存していることが示された (Fig. 1)。また, 本剤の土壌における脱着は, その脱着操作の繰り返しの回数にかかわりなくその率は, いずれも谷和原土壌に比べ竜ケ崎土壌のほうが高かった (Fig. 2)。
これらの結果から, 谷和原土壌および竜ケ崎土壌における本剤の下方移動性の差異は, 主としてそれぞれの土壌に存在する有機物に依存した吸着および脱着の差異によると推定される。また, 本剤の土壌水中濃度およびそれに依存して発現すると想定される殺草活性は, 上記のような吸着・脱着によって支配されていると考えられる。