雑草研究
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スズメノカタビラ (Poa annua L.) 体内における Xanthomonas campestris pv. poae (JT-P482) の増殖および移行
今泉 誠子藤森 嶺
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1997 年 42 巻 2 号 p. 115-124

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抄録

スズメノカタビラ用微生物除草剤である Xanthomonas campestris pv. poae (JT-P482) のスズメノカタビラ体内における増殖および移行を, リファンピン耐性菌 (Rif-482) を用いて追跡した。試験に先立ち, リファンピン法について検証を行った。JT-P482およびRif-482 (それぞれ菌濃度は109cfu/ml) を接種したスズメノカタビラ体内の菌数は, 3日後に1.0×108cfu/g FW, 3週後には最大1.5×1010cfu/g FWに達したのち, 9週後には5.4×108cfu/g FWまで減少した。生重の減少率で表した防除率 (% Control) は, 処理4週後にJT-P482では88%, Rif-482では86%となり, この時の病徴は激しい萎凋から枯死にいたるいわゆる青枯れ症状を呈した。以上のように, 菌数の変動および防除率に関し, JT-P482およびRif-482間に有意な差は認められなかった。また菌数および防除率それぞれのピークには約1週間の時間差が見られた。一方, JT-P482およびRif-482の, 103から1010cfu/mlに至る各濃度をスズメノカタビラに処理し, 3週間後に菌数および防除率を比較した場合にも, 上記試験同様, 両菌株間に有意な差は認められなかった。以上の結果に基づいて, Rif-482を用い, 本菌の植物体内の増殖・移行過程を追跡した。スズメノカタビラの完全展開葉1枚の先端部位にハサミでRif-482を接種し, 植物が幼苗期から出穂期にいたるまで菌数の変化を追跡したところ, (1) 菌は接種部位より茎を通って根にいたり, ついで植物各部位に移行 (全身感染) した。(2) 菌の増殖にともない病徴の進展および植物体内水分の減少が認められた。以上の事実から, 本菌の作用機作は, Xanthomonas campestris pv. poae が, 宿主であるスズメノカタビラの導管内で増殖し導管を閉塞させた結果, 植物各部位への水分供給を絶ち, 植物を萎凋, 枯死に至らしめるものと考えられた。

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