雑草研究
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ヘアリーベッチ (Vicia villosa Roth) を利用した水田における雑草抑制と水稲収量への影響
堀元 栄枝荒木 肇伊藤 一幸藤井 義晴
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2002 年 47 巻 3 号 p. 168-174

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抄録

ヘアリーベッチ (Vicia villosa Roth) を利用して化学肥料や除草剤を節減した水稲栽培を確立するため, ヘアリーベッチすき込み栽培ならびにヘアリーベッチ不耕起マルチ栽培を実施することにより, 水田雑草の発生抑制および水稲の生育・収量に対する影響について比較検討した。灌漑後7日から24日までの間の土壌の酸化還元電位は, ヘアリーベッチすき込み水田と不耕起マルチ水田はともに約-300mVまで低下した。雑草乾物重量はヘアリーベッチすき込み水田において38.1g/m2となったのに対し, 不耕起マルチ水田では5.9g/m2となり, ヘアリーベッチすき込み水田より少なかった。発生雑草種としては, ヘアリーベッチすき込み水田ではホタルイ属雑草の発生が多く観察されたが, 不耕起マルチ水田ではノビエ類やホタルイ属の雑草発生が抑制された。しかし, アゼナ類, アブノメ, ホシクサ, ヒデリコ, キカシグサなどの草種は他の処理区より多く発生した。2001年の試験では, ヘアリーベッチすき込み水田と不耕起マルチ水田では水稲の初期生育が抑制され, 特にマルチ水田での分げつ数が少なかった。2001年のヘアリーベッチすき込み水田の収量は427kg/10aであったが, 不耕起マルチ水田では2000年と2001年においてそれぞれ, 394kg/10aと304kg/10aとなった。
以上の結果より, ヘアリーベッチ不耕起マルチ法はすき込み法より効果的に水田雑草を抑制するが, 水稲の生育および収量への悪影響も示唆された。

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