抄録
岡山県津黒高原の畑地造成跡地に成立したオオミズゴケが生育する湿地を調査地とし,人為攪乱とオオミズゴケが生育する湿地の成立要因についての解明を試みた.まず,聴き取りと空中写真判読により,本調査地が1970 年頃に畑地として造成されていたことを明らかにした.次に,階層別植生図の作成,地下水位,水質,日射量の測定及び地形解析を行った.決定樹分析によりオオミズゴケが成立する環境要因の閾値を求めたところ,地下水位と日射量に下限値が設けられた.オオミズゴケは,この閾値を基に求めた潜在的生育地内に多く分布し,それは造成地や谷底面の地下水位の高い場所であった.また,ミヤコイバラ等の低木下に分布しており,弱光条件が適していることが示唆された.本調査地では,透水性の悪い造成地に,周囲から湧水が流入して地下水位の高い場所ができ,そこに低木が侵入することで,オオミズゴケの生育に適した環境が形成されたと考えられる.