湿地研究
Online ISSN : 2434-1762
Print ISSN : 2185-4238
北海道のタンチョウ営巣地点における植生-植生図を用いた解析
正富 宏之 正富 欣之
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2013 年 3 巻 p. 15-28

詳細
抄録
タンチョウGrus japonensis の営巣環境解明のため2000-2009 年に飛行調査で得た営巣地点情報を植生図に重ね,営巣地点と周辺バッファ内の植生を解析した.巣は26 植生区分に認められ,ハンノキ群落に27.8%(N=916),ヨシ-イワノガリヤス群落に23.3%,その他の順で,ハンノキとヨシを主要種とする植生タイプが全体の84.5%を占めた.しかし,湿原中核部と周辺部を比べるとハンノキとヨシの優占群落以外の共通タイプは少なく,周辺部は中核部よりハンノキ林以外の営巣が多かった.個々の巣周辺植生環境は大きく異なるが,中核部の平均的構成は,高層湿原植生回避の傾向を除けば全体の植生タイプの面積構成を反映し,新規と継続の各営巣地点植生の比較でも,巣位置の選択における植生の重要性は低かった.また,営巣地の写真と照合すると,植生図との景観的不一致が一部で認められたが,広域的に同一精度の植生図が完成した場合は,保全適地解析のために今回の結果は利用可能と思われた.
著者関連情報
© 2013 日本湿地学会
前の記事 次の記事
feedback
Top