2018 年 8 巻 p. 33-44
釧路湿原国立公園内のニホンジカ捕獲候補地は,希少鳥類であるタンチョウの生息域でもある.タンチョウの保全に配慮したニホンジカの管理を考えるために,捕獲候補地として検討されているコッタロ湿原の道道クチョロ原野塘路線及び釧路川右岸堤防周辺を対象に,タンチョウの分布様式の把握を行った.コッタロ湿原に関しては定点からのタンチョウの観察及び踏査による足跡確認を行った.また,釧路川右岸堤防周辺では,自動車あるいは徒歩により一連のカウント調査を実施した.タンチョウの個体及び足跡の位置を地理情報システムに入力して,位置関係を明示することで空間解析を行った.2015 年及び2016 年における12 月から2 月までのコッタロ湿原では,湧水地あるいは河川のどちらか一方から200m 以内で,タンチョウを頻繁に確認した.また,2015 年及び2016 年における釧路川右岸堤防周辺で,12 月から2 月までは湧水地から500m 以内で,3 月から10 月までは河川から200m 以内で,タンチョウを頻繁に確認した.ニホンジカ捕獲に際しては,これらの湧水地や河川周辺で,タンチョウの存在を事前に確認することが,その保全のために重要である.