抄録
ディスプレイ画面に表示された文書の校正は、“黙読”で行なわれるのが一般的であるが誤字を見落とすことが多い。本研究では文書校正を“音読”で行う方法とパソコンのマウスで文章をドラッグしながら校正する“マウス・ドラッグ法(MD法)”について、通常の黙読による方法と誤字の検出精度を比較した。その結果、黙読よりも音読やMD法による校正は誤字の検出に優れていることがわかった。また文書を黙読、音読、MD法によって校正した場合の視線の動きを眼球運動測定装置によって測定した。その結果、音読やMD法における視線の動きには頻繁に“戻り読み”しながら文字を読む特徴が認められ、文章を読む速度も黙読に比べて遅いことが分かった。このことから音読やMD法が黙読に比べて誤字の検出に優れているのは、被験者が無意識のうちに文字を“戻り読み”しながら文書校正しているためと推定される。