抄録
白い紙に黒い墨で書かれた書は一見単調な表現のようであるが,紙のテクスチャや墨の濃淡などを組 み合わせることによって複雑な表情を持つ作品となる.その表面に現れた微妙かつ繊細な表情こそが書家の意図を 鑑賞者に伝えるインタフェースとなっている.これに加え,展示の場では照明の調整が行われ,書作品そのものが 持つ表情を際立たせる工夫がしばしば行われている.本研究では従来型の照明に代わり,プロジェクタカメラシス テムを用いてることで,コンピュータが書の繊細な表現を捉え,それを強調する形で光を重畳投影するということ を試みる.まず,書作品の評価理由に含まれる感性語を抽出し,本システムで行える光投影処理との対応関係図を 作成した.その後,実際に書に対して光投影を行う実験を通してその対応関係について確認した.これらを通して, 書家が作品に込めた意図を拡張提示する Intention Augmentation という考えについて検討した.