西部造船会々報
The 104th West-Japan Society of Naval Architects Meeting
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On A Natural Ballast Water Exchange Method
沼田 尚玉島 正裕福地 信義
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p. 9

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抄録

バラスト水中に含まれる有害海洋性生物による沿岸海域の海洋生態系に及ぼす各種の影響を防ぐため、バラスト水管理の必要性が指摘されている[1]。IMOでも有害水生生物·病原体の移動を最小化する船舶バラスト水制御·管理のためのガイドラインが1997年決議され[2]、現在新条約策定について審議されている。バラスト水管理手法として、船上または陸上での殺滅処理と、外洋上におけるバラスト水交換が挙げられている[1][2][3]。前者に対するいろいろな手法も研究されているが実用的レベルには達していない。これに対してバラスト水交換は運航形態上最も実用的であると認識され、米国、カナダ、豪州などいくつかの国は, 入港する船舶に対し外洋上でのバラスト水交換を要求し、多くの船舶はバラスト水の交換を実施している。現在行われているバラスト水の交換方法として、各タンクを完全に空にした後再注入するSequential法、各タンクからオーバーフローさせるFlow-through法[4]、各タンクに注水しながら同時に排水するDilution法がある。前2者が主流であるが、Sequential法ではバラスト水交換状態での船体縦曲げモーメントやせん断応力の増加、スラミングやスロッシングの発生、プロペラレーシングおよび船橋視界等の船舶安全性への影響が、またFlow-through法ではタンク内の過圧や甲板上の錆や氷結などの問題が指摘されている[5]。またバラスト水交換には常時ポンプを作動させる必要があり、乗組員の作業負担の増加など運航経済性への影響も出てくる。本報告では、船舶の安全性が維持できかつバラスト水交換時のポンプ作動時間を極力少なくするように、バラスト水の自然落下と船舶航行中の船体まわりの圧力差を利用した新しいバラスト水の交換法を提案した。すなわち船首バルブ先端に導入口をあけ、主バラストパイプに接続して海水を取り込み、船底に設けたシーチェストから航行中に自動的に排出する。1/120模型船を用いて自然換水を確認した。また1/50のシングルハル、ダブルハル用のバラストタンク模型を制作し、換水効率を調べた。さらにAfranax Tankerについて提案した方法のポンプ消費エネルギーと換水時のパイプ内圧力損失による消費エネルギーを推定しFlow-through法と比較した。自然換水法のポンプ消費エネルギーはFlow-through法の1/10、パイプ内損失を考慮した全消費エネルギーは1/5となり有効な方法であることが確かめられた。

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© 2002 The Japan Society of Naval Architects and Ocean Engineers
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