西部造船会々報
第108回西部造船会例会(西部造船会々報 第108号)
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加熱曲げ加工における加熱経路指示システムについて
*勝田 順一河野 和芳松岡 幸加柴田 信彦
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p. 000006

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抄録

造船現場における技能において,板曲げ加工,特に加熱による板曲げ加工は,現場作業者の減少や年齢構成の面から,技能伝承が危惧されている。この加熱曲げ加工は,船舶の外観や推進性能に大きく影響するために非常に重要な作業であり,しかも,多くの経験に基づく熟練した技能が必要である。 加熱曲げに関する様々な研究は古くから行われてきたが,著者らも,造船所に対する曲げ加工の状況に関するアンケート調査を実施して,その結果に基づいて加熱曲げ加工の自動化・効率化システムに関する研究を行ってきた。本研究の主目的は,技能伝承に寄与することである。その成果は,本会にいくつか報告している。 第1報では,加熱曲げ加工の基本的変形である"角変形"の変形量算出の新しい考え方を提案し,二次的変形の発生する原因について考察した。また,試験室で加熱曲げ試験を行うためのシステムである,温度計測や形状計測のシステムについて報告した。さらに,西日本の規模の異なる造船所にアンケート調査した結果から,加熱曲げ加工の作業者確保や技能伝承の状況について報告した。 第2報では,加熱曲げ加工による変形現象を簡易的に推定する,パソコンを用いたシミュレータを提案した。このシミュレータは,非定常熱伝導解析や塑性変形解析を省略して,3次元弾性解析のみで鋼板の変形を推定するものであった。また,第3報で,この鋼板加熱曲げ変形の簡易推定システムにおける,擬似加熱条件の考え方と疑似加熱条件でのシミュレート結果を示した。 さらに,第2報で示したように,造船所現場作業者へのアンケートによる加熱曲げ加工手順の調査結果から,同じ加工目的形状でも,作業者によって加熱経路や加工順序が全く異なることを明らかにした。このことから,曲げ加工の実際は,作業者個々の経験と工夫によって現場の曲げ加工が行われていること,および目的の形状に到達する手順は数多く存在することが推察された。 本報では,ある加工目的の形状が与えられた場合,十分な経験を有していない作業者に,基本的な加工位置や加工回数を指示するためのシステムの考え方,およびこの指示システムで決定された加熱経路や加熱回数を,前報までに報告した変形の簡易推定システムで実行した結果を加工目的形状と比較して考察することを目的とする。また,決定された船型を表わす情報から,曲げ加工する曲面板を取り出すシステムについても述べた。 本研究の結果,本システムによって,目的の形状に加熱曲げ加工する手順を簡易的な処理によって短時間で指示できるシステムを提案することができ,第2報で提案したシミュレータを用いて,求めた加熱経路を疑似加熱した結果,ほぼ目的の形状に加工できることを確認した。

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© 2004 公益社団法人日本船舶海洋工学会
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