西部造船会々報
第108回西部造船会例会(西部造船会々報 第108号)
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画像処理を利用した海洋構造物模型の波浪中運動計測
*中村 昌彦梶原  宏之
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p. 000018

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抄録

係留された海洋構造物の模型実験を行う場合、特にブイのように小型の構造物の場合は、係留ラインに比較して構造物の大きさが小さいために、模型の排水量が小さくなり、波浪中における運動を精度良く計測することが困難であった。 近年、海洋構造物はますます深い海域で係留されるようになり、水深に制限のある水槽で模型実験を行うためには、ますます小さな模型を使うことが余儀なくされて来ている。 従来、浮体模型の運動計測にはポテンショメータを用いた機械式の運動計測装置が使用されることが多かった。 この装置は機械部の摩擦、可動部分の質量が大きいので、小型模型、半潜水式海洋構造物のように流体力が小さい場合には計測精度に問題があり、極小模型に対しては使用不可能であった。 計測に発光ダイオードを用いた光学式無接触変位計を使用したとしても、発光ダイオードとカメラの同期を取るためにケーブルを模型に渡す必要があり、小さな模型の運動、ドリフト量を計測する場合は、ケーブルの取り扱いに注意が必要であった。 そこで画像処理を利用した、完全無接触型の運動計測装置が使用されるようになってきた。 これらの装置は画像処理を専用のボードで行うものであり、一般的に非常に高価である上、波高、係留ライン張力などの他の計測量を同期を取って収録するには特別な工夫を要した。 画像処理も2値化画像からしきい値処理によりターゲットを抽出したり、カラーのターゲットを色抽出して、面積中心より位置を計測するものがほとんどであった。 また、回転運動を計測する場合は2個のターゲットを必要とし、計測後の後処理が必要であった。 近年は、パソコンの高性能化に伴い、画像処理をパソコンのソフトウエアー上で(リアルタイムで)行うことが可能になってきており、CCDカメラ、画像入力ボード、画像処理用ソフトウエアーを準備するだけで専用機に比べてはるかに低価格で画像処理システムを実現できるようになった。 そこで本研究では、パソコン上で動作する画像処理用ソフトウエアーを用いて海洋構造物模型の波浪中運動計測を試みた。 専用機と異なり、画像処理のプロセスを自由に組めるので、いろいろな方法でのターゲットの抽出、ターゲットの運動計測が可能となる。 本論文では、しきい値処理による位置計測、形状パターンマッチングによる運動計測、濃淡パターンマッチングによる運動計測、自動抽出された形状をターゲットとして利用する運動計測等が行われた。 位置計測精度の確認、波浪中運動計測精度の確認等を行った結果、良好な結果が得られたので報告する。

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© 2004 公益社団法人日本船舶海洋工学会
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