1993 年 4 巻 3 号 p. 174-183
環境汚染現象は, 経済学的には外部不経済として把えるのが一般的であるが, そこからいくつかの経済的インセンティブを利用した政策用具が登場する。まず, 最も正統的な政策用具はピグー的課税・補助金の考え方 (課税・補助金アプローチ) である。しかし, 理論的には経済的効率性のほか優れた利点を持っているにもかかわらず, 実行可能性は極めて乏しい。そこで, 試行錯誤的に均衡点に接近しようとする考え方 (ボーモル=オーツ・アプローチ) が出てくる。他方, 外部性を市場化しようとする考え方 (外部性市場化アプローチ) がコースによって提唱される。さらに, 近年, これをより現実に則した形で, 環境基準を維持しつつ, 価格のインセンティブを有効に活用しようとする試み (パーミット・アプローチ) がなされている。経済的インセンティブを利用する政策用具は, 漸く理論から現実への方向を確かなものにしつつある。