本研究では、日本の賃金形成の二重構造を正規・非正規という 2 部門に関して分析する。首都圏で 2002 年から 2014 年に実施されたサーベイ調査の結果を利用し、両部門の賃金決定および労働者が 2 部門に分かれる仕組みを同時に推定する。推定の結果、以下のような日本の新たな二重労働市場についての事実が示された。正規労働者の賃金は勤続年数と外部労働市場経験年数とともに上昇するが、非正規労働者の賃金は外部労働市場経験年数のみを反映する。この経験年数のもたらす賃金上昇については、女性正規労働者を除くと、正規・非正規の形態間で大きな差はない。また、企業規模や学歴による賃金差は正規雇用労働者の賃金のみに存在する。さらに、正規労働者の賃金-勤続年数プロファイルは、2000年代初から 10 年以上安定している。