日本心臓血管外科学会雑誌
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[成人心臓]
交通外傷による鈍的心損傷
—左心耳破裂の1例—
野村 亮太川口 信司小澤 貴大後藤 新之介寺井 恭彦山田 宗明宮野 雄太内山 大輔中井 真尚山崎 文郞
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2021 年 50 巻 3 号 p. 165-169

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抄録

鈍的外傷による心破裂は外科的治療介入以前に死亡に至る症例が多く死亡率の高い疾患である.損傷部位は心房,心耳,心室が含まれるが左心耳の損傷は稀である.症例は71歳,女性.自家用車を運転中に民家に衝突して自動車前面が大破する高エネルギー外傷にて救命救急センターに搬送された.心タンポナーデに対して経皮的心嚢穿刺ドレナージを実施後に当院に搬送された.胸骨正中切開アプローチによる緊急手術で左心耳基部に裂創を認め,人工心肺補助下で縫合止血を行った.止血後は循環動態安定し,心嚢内に他の損傷がないことを確認して閉胸した.術後の超音波およびCT検査で新たな腹腔内出血が判明し試験開腹術を施行したところ腹腔内臓器損傷による活動性出血は認められず,全身ヘパリン化に伴う外傷性腹壁ヘルニアからの出血が腹腔内血液貯留の原因であると推定された.鈍的心損傷は稀な病態であり,文献的考察を加えて報告する.

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